Issuer Credit Research

発行体フラッシュ:PT Bank Mandiri (Persero) Tbk

発行体フラッシュ:PT Bank Mandiri (Persero) Tbk

レポート日:2026-10-27 イベント日:2026-10-23 イベント名:Q3/9M2026 Results 調査基準日:2026-10-26

1. Flash Conclusion

Bank Mandiriの9月末時点の決算を踏まえても、従来の安定的な信用見通しに変更はない。ただし、先行指標は表面的な利益成長ほど安心できる内容ではない。政府の支配下にあるユニバーサルバンクとして、同行の預金・貸出基盤は引き続き損失吸収の原資となる収益を生み出している。連結ベースの9カ月累計親会社株主帰属利益は20.7%増加し、銀行単体の自己資本水準は6月末から回復、流動性比率も全体として100%を上回る水準を維持した。一方、調達コストの上昇によって四半期の利鞘は縮小し、正常先に分類される条件変更債権の増加により、リスク債権(Loans at Risk、LaR)比率は上昇した。これらの動向は、信用評価を一段と引き上げる根拠というより、モニタリングを強化すべき要因と捉えられる。

シニア債権者にとって、足元の収益力、自己資本、流動性の状況は引き続き信用力を下支えしている。ただし、返済条件を変更した借り手の信用状態が悪化した場合、貸出金利の改定やコスト管理だけでは十分に対応できないリスクがある。政府による支配と金融システム上の重要性は信用面の安心材料となるものの、法的な保証を意味するわけではなく、シニア債と規制資本性証券に同等の保護が与えられることを示すものでもない。

2. Earnings Growth Masks the Higher Price of Funding

10月23日の決算説明資料によると、連結ベースの9カ月累計税引後・非支配株主持分控除後利益はIDR45.5tnとなった。与信費用控除前営業利益は17.5%増加した。営業収益が9.4%増加した一方、営業費用が1.6%減少したことが寄与している。引当費用も前年同期比5.8%減少した。こうした業績は内部収益による損失吸収力を裏付けるものだが、四半期ベースでみると評価はより慎重になる。受取利息が5.1%増加したのに対し、支払利息は20.7%増加し、純金利収益はQ2比3.6%減少した。四半期の親会社株主帰属利益は0.6%増と、ほぼ横ばいにとどまった。

銀行単体の四半期貸出利回りは6.91%から7.03%に改善したものの、預金調達コストは2.04%から2.34%に上昇した。この結果、銀行単体の四半期純金利マージン(NIM)は4.21%から3.87%に低下した。経営陣による貸出金利改定の進展は確認できるものの、調達負担の増加を相殺するには至っていない。月次の預金調達コストは7月、9月ともに2.36%で、8月に一時的な低下がみられた。調達コストが持続的な低下局面に転じたと判断するには、現時点の証拠は不十分である。

指標・対象範囲 直近報告値 比較対象 信用面での評価
連結PATMI、9M2026 IDR45.5tn 前年同期比+20.7% 収益力は引き続き損失吸収のバッファーとして機能
銀行単体NIM、Q3 3.87% Q2は4.21% 貸出利回りの改善を調達コスト上昇圧力が上回る
連結NIM、9M2026 4.43% 9M2025のプロフォーマ値は4.78% 利益増加にもかかわらず利鞘は縮小
連結LaR比率、9月 6.76% 6月は5.83% 正常先の条件変更債権について、より詳細な検証が必要
連結グロスNPL比率、9月 1.02% 6月は1.01% 報告上の不良債権比率はほぼ横ばい
銀行単体CAR、9月 18.4% 6月は17.5% Q3中に自己資本の余裕度が回復
連結LCR / NSFR、9月 127% / 108% 6月は125% / 106% 全体として流動性規制への適合余裕が小幅に改善

出所:公式決算説明資料PDFのpp.19-22、28、32、36。連結データにはBank Syariah Indonesia(BSI)を含まない。過去の連結数値との比較は、明記されている場合にはプロフォーマベースである。銀行単体NIMは日次平均残高、連結NIMは月次平均残高を用いて算出されている。四半期ベースと累計ベースの利鞘を混同すべきではない。

資金調達量の動向には一定の改善がみられる。銀行単体の貸出残高はQ3中に0.89%増加してIDR1,605.8tnとなった一方、預金残高は2.35%増加してIDR1,750.2tnとなり、預金の伸びが貸出の伸びを上回った。これに伴い、銀行単体の預貸率(LDR)は92.7%から91.2%に低下した。流動性預金(CASA)残高も前四半期比4.4%増加した。それでも、銀行単体のホールセール調達残高はIDR313.0tnと、四半期ベースでは小幅に減少したものの、2025年9月比では44.2%高い水準にとどまった。預金増加率の改善とLDRの低下だけで、調達金利の変動や借換えに対する感応度が解消されるわけではない。

決算説明資料では、通期の連結貸出成長率ガイダンスが従来の7-9%から9-11%に引き上げられた一方、NIMのガイダンスは4.3-4.5%、信用コストは0.6-0.8%に据え置かれた。これらは経営陣の目標値であり、達成済みの実績ではない。今後の貸出拡大については、調達コスト、新規貸出の質、自己資本の消費を踏まえて評価する必要がある。

3. Performing Restructurings Matter More Than the Flat NPL Ratio

連結LaR比率はQ3中に93bp上昇した。主因は、正常先に分類される条件変更債権の貸出全体に占める割合が1.89%から2.83%に上昇したことである。要注意先比率はおおむね横ばいで、グロスNPL比率も低水準を維持した。正常先の条件変更債権は債務不履行と同義ではないが、返済条件の変更と継続的なモニタリングを必要とする債権群が拡大していることを示している。NPL引当カバー率は235%を維持した一方、より広範なLaR引当カバー率は40.5%から35.1%に低下した。したがって、表面的に高いNPL引当カバー率を、条件変更債権に内在するあらゆる潜在損失に対する備えとみなすべきではない。

新たに開示された詳細データにより、従来のモニタリング上の情報不足は一部解消された。銀行単体のステージ2貸出は貸出全体の5.80%を占め、法人部門と商業部門のステージ2比率はそれぞれ6.31%、6.60%と報告された。これらの会計上の分類は、規制上のNPL分類とは異なる。また、銀行単体のセグメント別NPL比率には依然としてばらつきがあり、法人部門が0.25%、商業部門が0.62%、マイクロ・給与所得者向け部門が3.19%、個人向け部門が3.17%となった。これらの数値はリスクの所在を把握するうえで有用だが、単一時点のステージ別構成やホールセール部門の低いNPL比率だけでは、将来の損失に対する感応度を判断できない。連結ベースの年率換算信用コストは0.63%で、引き続きガイダンスの範囲内に収まった。

自己資本と流動性には、こうしたリスクに対応する余地がある。銀行単体の自己資本比率(CAR)は18.4%と、決算説明資料に示された基準所要比率14.68%を上回り、社内目標の18-20%の範囲内にあった。ただし、2025年末の19.4%は下回っている。リスク加重資産(RWA)は6月のIDR1,399tnからIDR1,450tnに増加しており、自己資本の消費が続くなかでも、四半期中にCARが回復したことは前向きに評価できる。全体のLCRとNSFRも小幅に改善した。これらのバッファーは従来の信用評価を下支えするが、通貨別の流動性の十分性を立証するものではなく、個別証券の損失吸収条項に関する問題を解消するものでもない。

4. What To Watch Next

次の検証ポイントは、貸出利回りの改善とCASA残高の増加によって、過度なリスクテイクを加速させることなくNIMの低下圧力を食い止められるかどうかである。四半期ごとの預金・ホールセール調達コスト、LDR、利鞘、引き上げられた貸出成長率ガイダンスの達成状況を一体的にモニタリングする必要がある。信用の質については、全体のNPL比率だけに依存せず、正常先の条件変更債権やステージ2貸出からNPLへの移行、セグメント別信用コスト、LaR引当カバー率を追跡すべきである。自己資本の内部創出、RWAの増加、今後の利益配分についても、社内CAR目標との関係で総合的に検証する必要がある。

今回の決算は、5月30日のSSCに関する追加考察について、開示資料に基づく限定的な速報検証を可能にするものとなった。資金調達、セグメント別・ステージ別の信用状況、自己資本、全体の流動性に関する最新数値が利用可能となったためである。ただし、これによって同考察で提示されたストレス発生順序に関する仮説や、自己資本の定量的な感応度が検証されたわけではない。また、決算説明資料によると、銀行単体の外貨建て貸出の99.9%は、同行が定義するカテゴリー1および2に該当する正常債権であった。しかし、この数値は借り手がナチュラルヘッジを有していることや、通貨別の資金調達が十分な耐性を備えていることを示すものではない。外貨建て資産・負債の満期構成、通貨別流動性、債務クラス別の支援、債券の契約条件については、引き続き確認が必要であり、要約レポートの対象範囲における検証も未了である。銀行単体のTier 1比率は、比率一覧表では17.2%、自己資本のグラフでは17.3%と表示されており、小幅な不一致がある。個別の資本性証券を精緻に分析する前に、この差異を照合・解消する必要がある。足元のスプレッドおよび相対価値については評価を行っていない。

5. Sources