Issuer Credit Research

Bank of Communications Issuer Summary

Issuer: Bank Of Communications | Document: Issuer Summary | Date: 2026-05-21

Report date: 2026-05-21
Issuer: Bank of Communications Co., Ltd.
Ticker: BOCOM
Sector: Chinese banking
Primary credit focus: 発行体信用、シニア債、非資本TLAC、Tier 2、優先株 / その他資本性証券、海外支店・子会社発行債のリスク差

1. Business Snapshot and Recent Developments

Bank of Communications Co., Ltd.(以下、BOCOM)は、中国本土を中核とする大手国有株式制商業銀行であり、中国の銀行システムの中でも、政策実行、企業金融、個人金融、決済、資金市場、総合金融子会社、海外拠点をつなぐ制度的重要性の高い発行体である。BOCOMは1908年創業、1987年4月に再編され、中国で最初の全国規模の国有株式制商業銀行として再出発した。2005年に香港、2007年に上海へ上場しており、現在は中国の大手国有銀行群と主要株式制銀行群の中間に位置する、規模と政策的重要性の大きい銀行として見るのが自然である。2025年年報は、BOCOMがG-SIBとして扱われ、The BankerのTier 1 capitalランキングで世界9位に位置付けられたと説明している。2026年2月にPBOCとNFRAが公表した国内システム上重要な銀行リストでも、BOCOMはカテゴリー3に残った。

初回カバレッジの出発点は、BOCOMを「中国政府に近いから無リスク」と見ることでも、「中国の不動産・家計信用問題に晒されるから脆弱」と単純化することでもない。BOCOMのシニア発行体信用は、規模、預金、国有株主、D-SIB / G-SIB指定、規制上の重要性、資本市場アクセス、そして政府支援蓋然性に強く支えられる。一方で、単体の収益性は高くなく、NIMは低下してきた。資産の質も見出しのNPL比率だけではなく、不動産、卸売・小売、カード、個人事業、個人消費、特別注意貸出、延滞の内訳を見る必要がある。したがって、BOCOMは「強いシニア発行体信用を持つが、スタンドアロン収益力と資産の質には継続監視が必要で、TLAC・Tier 2・優先株・海外支店・子会社債では順位と発行体を分けて読む銀行」と位置付ける。

2025年末のBOCOMグループは、総資産RMB15.55兆、顧客向け貸出RMB9.12兆、顧客預金RMB9.31兆、株主帰属資本RMB1.27兆を持つ。2026年第1四半期末には総資産がRMB16.27兆、顧客向け貸出がRMB9.44兆、顧客預金がRMB9.69兆へ拡大した。単純な貸出対預金比率は、2025年末で約98%、2026年第1四半期末で約97.5%であり、貸出をほぼ預金で支えるが、余裕が非常に大きいというよりも、預金基盤の安定性と預金コストの管理が信用力に直結する構造である。BOCOMは市場性調達だけに依存する銀行ではないが、譲渡性預金、発行債券、海外支店、TLAC、資本性商品も活用しており、資金調達構造は単純な預金銀行より複雑である。

2025年の見出し業績は安定していた。純営業収益はRMB265.6bn、前年比2.05%増、株主帰属純利益はRMB95.6bn、前年比2.18%増であった。2026年第1四半期には純営業収益がRMB69.7bn、前年比4.89%増、税前利益がRMB29.9bn、前年比8.66%増、株主帰属純利益がRMB26.2bn、前年比3.11%増となった。純利息収益は2026年第1四半期にRMB45.7bn、前年比7.21%増であり、2025年に弱かった利ざや収益の方向感が短期的にやや持ち直したように見える。

ただし、これを構造的な収益改善と読むには早い。BOCOMのNIMは2023年1.28%、2024年1.27%、2025年1.20%へ低下し、2026年第1四半期も1.23%にとどまる。ROAは2025年0.63%、ROEは8.38%であり、2026年第1四半期も年率ROA 0.66%、年率ROE 9.07%であった。中国大手銀行として絶対利益は大きいが、収益性バッファーは厚いとは言いにくい。2025年のA株発行による普通株式数増加もあり、2026年第1四半期の普通株EPSは前年同期比で低下した。シニア信用の安定性は利益成長だけでなく、資本、流動性、支援期待に依存している。

資本面では、2025年のA株発行が重要である。BOCOMはMOF、CNTC、CDICを対象とするA株発行で約RMB120bnのグロス資金、約RMB119.9bnのネット資金を調達した。これにより、核心Tier 1比率は2024年末10.24%から2025年末11.43%へ上昇した。2026年第1四半期末には、総自己資本比率15.61%、Tier 1比率12.48%、核心Tier 1比率11.25%であった。発行体信用では、この資本補強がBOCOMの制度的重要性と政府系株主の支援意思を示す材料になる。ただし、資本増強は株主レベルの支援であり、個別債券に対する中国政府の明示保証ではない。

株主構成は信用上の重要な支えである。2026年第1四半期末の株主表では、MOFがA株とH株を合わせて約35.01%を保有し、HSBCがH株で16.00%、National Council for Social Security Fundが表上13.05%、注記ベースでは追加H株を含め13.75%を保有していた。MOFはBOCOMの最大株主であり、2025年新規発行株式には長期ロックアップが付いている。HSBCの保有は国際的な歴史とガバナンスの補完材料ではあるが、HSBCがBOCOMの債務を保証するわけではない。BOCOMの信用上の支えは、HSBC保有よりも、中国政府・政策金融システム内での重要性、MOF保有、D-SIB / G-SIB指定、規制当局の監督にある。

事業面では、BOCOMは法人金融、個人金融、金融市場、子会社を含む総合金融サービスを提供する。2025年年報は、法人顧客約3.07百万、個人顧客約205百万、国内営業拠点2,800超、海外支店・子会社・駐在員事務所24を示している。主要業務は預金、貸出、サプライチェーン金融、決済、貿易金融、投資銀行、カストディ、ウェルスマネジメント、カード、プライベートバンキング、トレジャリーであり、金融リース、基金、理財、信託、保険、海外証券、債務株式化関連子会社も持つ。BOCOMの信用力は単一商品の競争力というより、顧客基盤、決済・預金関係、政策接続、資本市場アクセスを合わせたシステム内フランチャイズに支えられる。

2025年から2026年第1四半期の方向感をまとめると、BOCOMは規模と制度的重要性を維持し、貸出・預金を増やし、資本補強を行い、見出しNPL比率を安定させた。一方で、NIMは低い水準にあり、純利益成長率は低単位、普通株EPSは希薄化し、2026年第1四半期にはNPL比率が1.30%へ小幅上昇し、引当カバレッジが2025年末208.38%から202.80%へ低下した。発行体信用は強いが、投資家が安心してよいポイントと、継続的に見るべきポイントがはっきり分かれている。

2. Industry Position and Franchise Strength

BOCOMのフランチャイズは、中国大手国有銀行群の中では相対的に小さいが、株式制銀行群との比較では非常に大きい。ICBC、CCB、Agricultural Bank of China、Bank of Chinaのいわゆる四大行に次ぐ大手国有商業銀行として、企業金融、個人金融、政府関連プロジェクト、上海国際金融センター、包括金融、貿易金融、技術金融、富裕層・ウェルスマネジメントなどを横断する。規模だけで見れば四大行より劣るが、全国銀行としての支店網、預金基盤、政策的役割、D-SIB / G-SIB指定は、一般的な地方銀行や中小株式制銀行とは明確に違う。

中国銀行セクターの信用分析では、発行体の「市場シェア」だけでなく、「金融システム内で代替困難か」「規制当局が安定性を重視するか」「預金流出時にどの程度信認を維持できるか」「資本補強や流動性供給の蓋然性があるか」を見る必要がある。BOCOMは、総資産RMB15兆超、顧客預金RMB9兆超、国内拠点2,800超、法人顧客3百万超、個人顧客2億超を持つ。これだけでもシステム上の重要性は高い。さらに、BOCOMは国内D-SIBカテゴリー3であり、年報はG-SIB評価指標も開示している。単なる民間商業銀行というより、金融システムの安定と政策実行に組み込まれた銀行である。

BOCOMの国内業務は、政策重点分野と結び付く。2025年年報では、包摂金融、貿易金融、技術金融、ウェルスマネジメントを戦略的優先領域として掲げ、実体経済、先進製造、グリーン、科学技術、民生、消費、地域協調、上海金融センター建設を支援する姿勢を示している。これは信用上プラスでもあり、マイナスでもある。プラス面では、BOCOMが国策金融の実行主体であり、政府・規制当局が金融安定上重要視する発行体であることを示す。マイナス面では、貸出の一部が純粋な商業的リスク・リターンだけで決まらず、政策的な信用供給、低利、長期、景気下支え、地方・インフラ関連に影響され得る。

BOCOMは上海を本拠とすることも特徴である。上海は中国の金融市場、債券市場、人民元国際化、資本市場改革、自由貿易区、クロスボーダー金融の中心の一つである。BOCOMの上海拠点性は、資金市場、トレジャリー、決済、法人金融、資本市場関連ビジネスにとって自然な強みになる。もっとも、この強みは信用リスクを消すものではない。金融市場や企業金融に強いことは、資金調達・顧客基盤・政策接続には有利だが、金利リスク、市場リスク、企業信用、商業不動産、地方政府関連、クロスボーダー規制にも接続する。

預金フランチャイズは、BOCOMのシニア信用で最も重要な実体的支えである。2025年末の顧客預金はRMB9.31兆で、2024年末からRMB507.5bn、5.77%増加した。2026年第1四半期末にはRMB9.69兆へさらに4.06%増加した。Q1の内訳では、法人預金が約54.57%、個人預金が約43.86%を占め、要求払預金比率は30.29%、定期預金比率は68.14%であった。預金基盤は安定調達を支えるが、定期預金比率の高さは預金コストとNIMに影響する。中国銀行セクターでは預金競争、預金定期化、貸出金利低下、政策的利下げが重なりやすく、BOCOMのNIMを構造的に抑える。

顧客基盤の広さは信用上の強みである。法人顧客3.07百万、個人顧客205百万という規模は、決済、給与、消費、企業財務、サプライチェーン、資産運用、カード、保険、リース、信託、ウェルスマネジメントを横断した関係を可能にする。銀行の信用力は貸出資産だけでなく、顧客との資金循環をどれだけ押さえているかにも左右される。顧客の預金、決済、資金管理、融資、投資商品、カード、保険を総合的に扱える銀行は、資金調達の粘着性と収益源の多様化を得やすい。

一方で、BOCOMのフランチャイズは四大行より一段小さく、収益性も強いとは言いにくい。2025年のROA 0.63%、ROE 8.38%、NIM 1.20%は、巨大な信用リスクを厚い利益で吸収する銀行というより、制度的重要性、預金、資本、引当、政府支援期待で守られる銀行という性格を示す。信用分析上は、この違いが重要である。シニア債では支援期待とシステム上の重要性が大きな支えになるが、下位証券ではスタンドアロン収益力と資本の内生的蓄積力がより問題になる。

海外・子会社フランチャイズも分けて見る必要がある。BOCOMには海外支店・子会社・駐在員事務所があり、金融リース、理財、信託、保険、海外証券などの子会社も持つ。ただし、本体、海外支店、金融リース子会社、その他グループ会社は同じ信用ではない。支店発行債では準拠法、税務、現地規制、通貨流動性を確認し、子会社債では親会社保証やサポート契約の有無を確認する必要がある。

業界ポジションを一言で言えば、BOCOMは「四大行ほど巨大ではないが、中国銀行システムに不可欠な大手国有銀行」である。シニア信用では、この地位は非常に強い支えになる。一方で、投資家にとっては、四大行に近い支援期待と、四大行より弱い収益性・規模・市場順位を同時に見る必要がある。BOCOMは中国銀行セクターのベータを強く持ち、ソブリン支援と規制安定性に強く結び付く発行体である。

3. Segment Assessment

BOCOMの事業は、法人金融、個人金融、トレジャリー、その他子会社・総合金融に分けて見ると理解しやすい。2025年のセグメント別純営業収益は、法人金融RMB133.1bn、個人金融RMB96.7bn、トレジャリーRMB34.6bn、その他RMB1.2bnであった。税前利益は法人金融RMB60.7bn、個人金融RMB12.9bn、トレジャリーRMB29.4bn、その他RMB0.8bnである。法人金融が収益・利益の中心であり、個人金融は顧客基盤と預金を支えながら信用コストを多く負担し、トレジャリーは資金運用・流動性・市場収益の役割を持つ。

法人金融は、BOCOMの制度的重要性を最も直接に示す部門である。2025年末の法人貸出はRMB6.04兆、総貸出の66.25%を占め、NPL比率は1.19%であった。法人金融は、製造、交通・倉庫・郵便、リース・商業サービス、不動産、公共施設、電力・熱・ガス・水、卸売・小売、建設、金融、教育・科学・文化・公共衛生、鉱業、情報通信などに広く分散している。BOCOMは、企業の決済、運転資金、サプライチェーン、貿易金融、インフラ、政策重点産業を支える銀行であり、中国経済全体の信用サイクルに深く組み込まれている。

法人貸出の中で最も重要な制約は不動産である。2025年末の不動産業向け貸出はRMB515.3bn、総貸出の5.65%であり、残高比率だけなら管理可能に見える。しかしNPLはRMB21.7bn、NPL比率は4.20%で、法人主要業種の中でも明確に高い。中国不動産セクターの調整は、BOCOMのシニア信用を直ちに壊すほどの規模ではないが、低NIM環境では信用コストと担保価値の圧力を通じて収益バッファーを削る。BOCOMの不動産リスクは、開発会社向けだけでなく、建設、卸売・小売、商業サービス、地方関連、個人住宅ローンにも間接的に波及し得る。

その他の法人業種では、卸売・小売業のNPL比率2.77%、宿泊・飲食業のNPL比率10.43%も注目点である。宿泊・飲食は残高RMB37.9bnと小さいためシステム全体への影響は限定的だが、比率の高さは中小企業・サービス業の弱さを示す。卸売・小売は残高RMB364.9bnで、消費、物流、在庫、民間企業資金繰りとつながるため、景気が弱い局面では信用コストが出やすい。製造業はRMB1.20兆、NPL比率1.38%であり、政策重点分野として伸びる可能性がある一方、輸出、過剰能力、技術競争、産業補助金、民間投資の弱さを確認する必要がある。

交通・倉庫・郵便、電力・熱・ガス・水、公共施設関連は、公共性が高く、BOCOMの政策接続を示す。2025年末の交通・倉庫・郵便はRMB1.04兆、NPL比率0.31%、電力・熱・ガス・水はRMB462.5bn、NPL比率0.20%、水利・環境・公共施設はRMB453.6bn、NPL比率0.42%であった。これらはNPL比率が低いが、地方政府関連、料金規制、長期資金、資本消費、政策的貸出条件と結び付く。低NPLだからリスクがないというより、政府・公共セクターの支払い能力と政策支援に依存する性格がある。

個人金融は、預金基盤、カード、住宅ローン、消費ローン、個人事業ローン、ウェルスマネジメントを担う。2025年末の個人貸出はRMB2.84兆、総貸出の31.07%、NPL比率は1.58%であった。法人貸出のNPL比率1.19%より高く、2025年のセグメント別信用減損損失も個人金融がRMB33.7bnと法人金融RMB22.1bnを上回った。個人金融はBOCOMにとって顧客基盤と預金の源泉であるが、信用コストの面では重要な制約である。

住宅ローンは個人金融の最大項目である。2025年末の住宅ローンはRMB1.44兆、総貸出の15.81%、NPL比率は1.01%であった。住宅ローンのNPL比率は不動産業向け法人貸出より低いが、中国住宅市場の弱さ、所得見通し、雇用、住宅価格、繰上返済、担保価値と密接に関係する。BOCOMの住宅ローン比率は極端に高くはないが、絶対額は大きい。住宅ローンの信用コストが少し上がるだけでも、低NIMの銀行にとっては利益吸収力を削る。

カード、個人事業ローン、消費ローンは、より短期的に景気・雇用・中小企業の影響を受ける。2025年末のクレジットカード貸出はRMB531.3bn、NPL比率2.68%、個人事業ローンはRMB462.3bn、NPL比率1.94%、個人消費ローンその他はRMB399.0bn、NPL比率1.77%であった。特にカードは、特別注意貸出比率4.21%、延滞比率5.09%と、リテール内でリスクの濃い領域である。これらはシニア信用を一気に崩すサイズではないが、BOCOMの収益性が低いだけに、信用コストの増加はROA / ROEを押し下げやすい。

トレジャリー部門は、流動性、投資、金利リスク、規制資本、収益補完を担う。2025年のトレジャリー純営業収益はRMB34.6bn、税前利益はRMB29.4bnで、信用減損は戻入RMB1.2bnであった。2026年第1四半期末の金融投資は、FVTPL投資RMB707.9bn、償却原価投資RMB2.79兆、FVOCI投資RMB1.14兆を含み、総額で大きい。大手国有銀行として、政府債、政策性金融債、高品質流動資産はLCRとNSFRを支える。一方で、金利環境、会計分類、評価損益、保有債券のデュレーション、流動性バッファーの質は、利ざや低下局面で利益の質を左右する。

子会社・総合金融は、BOCOMのフランチャイズを広げる一方、投資家に分析上の分離を求める。BOCOMは金融リース、基金、理財、信託、保険、海外証券、債務株式化関連などを持つ。これらは顧客関係、手数料、資産運用、投資銀行、リース資産、保険商品を通じて収益源を広げる。しかし、子会社の債務が親銀行と同じ信用を持つとは限らない。発行体、保証、keepwell、流動性支援、規制資本上の扱い、破綻処理上の位置付けを確認する必要がある。特にBank of Communications Financial Leasingのような子会社は、親との関係が強くても、本稿のBOCOM本体シニア信用とは区別すべきである。

2025年末の主な貸出区分とNPL比率は次の通りである。

貸出区分 2025年末貸出 総貸出比率 NPL NPL比率 信用上の読み方
法人貸出 RMB6,043.8bn 66.25% RMB72.2bn 1.19% 政策・企業金融の中核。分散はあるが不動産・中小企業・地方関連を確認
個人貸出 RMB2,835.0bn 31.07% RMB44.8bn 1.58% 預金・顧客基盤を支えるが、信用コストは法人より重い
不動産業 RMB515.3bn 5.65% RMB21.7bn 4.20% 明確な制約。残高比率よりNPL比率と担保価値が重要
卸売・小売 RMB364.9bn 4.00% RMB10.1bn 2.77% 消費・中小企業・民間企業景況に敏感
宿泊・飲食 RMB37.9bn 0.42% RMB4.0bn 10.43% 残高は小さいが比率は高く、サービス業の弱さを示す
住宅ローン RMB1,442.5bn 15.81% RMB14.6bn 1.01% 絶対額が大きい。住宅市場・所得・雇用を監視
クレジットカード RMB531.3bn 5.82% RMB14.2bn 2.68% リテール信用コストの重要監視対象
個人事業ローン RMB462.3bn 5.07% RMB9.0bn 1.94% 自営業・小規模企業の景況に敏感
個人消費ローン等 RMB399.0bn 4.37% RMB7.0bn 1.77% 消費・雇用の弱さが表れやすい
割引手形 RMB244.7bn 2.68% RMB0.02bn 0.01% 短期・担保性が高く、NPL比率は低い

Source: 2025 Annual Report.

セグメント評価の結論は、法人金融が制度的重要性と収益の柱、個人金融が顧客基盤と信用コストの主な圧力源、トレジャリーが流動性と収益補完、子会社が総合金融フランチャイズを担う、という構図である。下位証券・子会社債では、セグメントごとの収益性、信用コスト、資本消費、発行体の法的分離がより重要になる。

4. Financial Profile and Analysis

BOCOMの財務プロファイルは、巨大なバランスシート、安定した預金、低いが安定した利益、見出し上安定したNPL比率、十分だが突出して厚くはない資本、規制水準を上回る流動性で構成される。2025年と2026年第1四半期の数字から見る限り、BOCOMに短期的なシニア信用不安は見えない。一方で、ROA、ROE、NIMは低く、収益による損失吸収力は非常に強いとは言えない。BOCOMの信用力は、内生的な利益創出だけでなく、規模、預金、引当、資本市場アクセス、政府支援期待に大きく支えられている。

バランスシート成長は継続している。2025年末の総資産はRMB15.55兆で、2024年末から4.35%増加した。顧客向け貸出はRMB9.12兆で6.64%増、顧客預金はRMB9.31兆で5.77%増である。2026年第1四半期末には総資産がRMB16.27兆、顧客向け貸出がRMB9.44兆、顧客預金がRMB9.69兆となり、Q1だけで総資産は4.66%、貸出は3.52%、預金は4.06%増加した。これはフランチャイズの維持を示すが、同時にRWAと資本比率への圧力にもなる。Q1末の総自己資本比率は2025年末15.96%から15.61%へ低下しており、成長が資本を使うことは確認できる。

収益面では、2025年の純利息収益がRMB173.1bn、前年比1.91%増、純手数料・コミッション収益がRMB38.2bn、前年比3.44%増、純営業収益がRMB265.6bn、前年比2.05%増であった。税前利益はRMB103.8bn、株主帰属純利益はRMB95.6bnであり、前年比では小幅増益である。2026年第1四半期は、純利息収益が前年比7.21%増、純営業収益が4.89%増、税前利益が8.66%増となり、見出し上は改善した。ただし、Q1は一四半期の未監査データであり、通年の貸出再価格、預金コスト、債券投資収益、信用コストによって変動し得る。

NIMは最重要モニタリング項目である。BOCOMのNIMは2023年1.28%、2024年1.27%、2025年1.20%へ低下した。2026年第1四半期は1.23%で前年同期比横ばいとされるが、1.2%台前半という水準自体が低い。低NIMは、中国銀行セクターに広く見られる貸出金利低下、住宅ローン再価格、政策支援型貸出、預金定期化、預金競争、低金利環境を反映している。BOCOMは規模の大きさで絶対利益を維持できるが、同じNPLや信用コストを吸収するための利ざやバッファーは薄い。

ROAとROEも、BOCOMの信用プロファイルを読む上で重要である。2025年のROAは0.63%、ROEは8.38%で、2024年の0.65%、9.08%から低下した。2026年第1四半期の年率ROAは0.66%、年率ROEは9.07%で、短期的にはやや戻ったが、高収益銀行とは言えない。シニア信用では、低収益性を制度的重要性と資本で補える。しかし、AT1、優先株、Tier 2、非資本TLACなど、損失吸収や規制裁量に近い証券では、低い収益性がより重く見える。BOCOMの下位証券を評価する場合、単にシニア格付に近い発行体だから安心と見るべきではない。

コスト効率は相対的に安定している。2025年の費用収益比率は29.30%で、2024年の29.90%から改善した。2026年第1四半期も27.58%で、前年同期比2.82ポイント低下した。これは、BOCOMが経費を一定程度抑制できていることを示す。もっとも、低NIM環境では、費用削減だけで収益性を大きく改善することは難しい。銀行のコストは拠点、人員、IT、リスク管理、コンプライアンス、規制対応、デジタル化投資に固定的な要素が多い。費用効率の改善はプラスだが、信用力の主因ではない。

信用コストは、BOCOMの収益性を最も揺らす項目の一つである。2025年の信用減損損失はRMB54.5bnで、2024年のRMB52.6bnから増加した。2026年第1四半期の資産減損損失はRMB14.2bn、うち貸出信用減損損失はRMB13.5bnで、前年比9.30%増であった。これは、Q1の利益改善が信用コストの低下だけに依存していない一方、貸出成長と資産の質の圧力が続いていることを示す。NPL比率が安定しても、特別注意貸出、延滞、条件変更、担保価値、リテール延滞が先行指標として悪化する場合、信用コストは遅れて上がる。

見出し資産の質は安定している。2025年末のNPL残高はRMB117.0bn、NPL比率は1.28%で、2024年末の1.31%から小幅低下した。特別注意貸出はRMB150.8bn、比率1.65%である。引当カバレッジは208.38%、貸倒引当比率はおおむね2.7%前後であり、見出し数字としては十分に見える。2026年第1四半期末にはNPL残高がRMB122.5bnへ増え、NPL比率は1.30%へ0.02ポイント上昇し、引当カバレッジは202.80%へ5.58ポイント低下した。これ自体は小幅な動きだが、低NIM環境では見逃せない。

資産の質の中身は、信用上の論点をより明確にする。法人貸出のNPL比率1.19%に対し、個人貸出は1.58%である。個人貸出の特別注意比率は1.69%、延滞比率は2.56%で、法人の延滞比率1.00%より高い。カードの特別注意比率は4.21%、延滞比率は5.09%であり、リテール内で明確な弱点である。住宅ローンのNPL比率1.01%も、今後の所得・雇用・住宅価格を見ながら確認する項目である。

NPL比率が安定していても、先行指標は見続ける必要がある。2025年末の延滞貸出はRMB133.0bn、延滞比率1.46%で、前年末からRMB14.9bn、0.08ポイント増えた。90日超延滞貸出はRMB96.6bn、リストラ貸出はRMB77.2bn、うち3カ月超延滞リストラ貸出はRMB14.0bnである。低NIMの銀行では、これらがNPL認定や信用減損へ遅れて移る場合の利益影響が大きいため、見出しNPL比率と同じくらい重要である。

資本は、2025年のA株発行で大きく支えられた。2025年末の純資本はRMB1.59兆、核心Tier 1資本はRMB1.14兆、RWAはRMB9.96兆であった。総自己資本比率15.96%、Tier 1比率12.70%、核心Tier 1比率11.43%は、規制水準を十分に上回る。2024年末の核心Tier 1比率が10.24%であったことを考えると、2025年の資本増強は信用上明確にプラスである。一方で、2026年第1四半期末には総自己資本比率15.61%、Tier 1比率12.48%、核心Tier 1比率11.25%へ低下した。成長を続ける限り、内生的資本蓄積と外部資本・TLAC調達のバランスを見続ける必要がある。

流動性は規制水準を上回る。2025年末の流動性比率は75.88%で、2024年末73.34%から改善した。2025年第4四半期の日次平均LCRは123.02%、四半期末NSFRは110.38%である。これらは規制最低水準を上回り、短期的な流動性懸念を示さない。ただし、BOCOMのLCR / NSFRは中国の最上位大手行の中で必ずしも非常に厚いとは限らず、預金構成、譲渡性預金、発行債券、海外支店、外貨流動性、TLAC発行、金利市場の動きに敏感である。流動性は強みだが、無制限ではない。

財務プロファイルを投資家目線で整理すると、BOCOMのシニア債にとって重要なのは、絶対利益の大きさ、NPL比率の安定、引当カバレッジ、資本補強、預金の増加、LCR / NSFRの余裕、国有大手行としての支援期待である。制約は、NIMの低さ、ROA / ROEの低下、リテール信用コスト、不動産NPL、Q1のNPL比率小幅上昇、資本比率の成長による希薄化、下位証券の損失吸収性である。シニア信用は安定的に見えるが、単体の収益力だけで高い信用力を説明する銀行ではない。

5. Structural Considerations for Bondholders

BOCOMの債券投資では、発行体名が同じように見えても、請求権、順位、損失吸収、規制上の扱い、支店・子会社の違いを必ず分ける必要がある。シニア発行体信用の強さは、すべてのBOCOM関連証券に同じリスクを与えるわけではない。初回カバレッジでは個別の最終条件書を確認していないため、本稿は証券別の投資判断ではなく、構造的な読み方を整理する。

第一に、BOCOM本体の普通シニア債務と預金は、発行体信用の中心である。大手国有銀行、D-SIB / G-SIB、MOF筆頭株主、巨大預金、規制監督、資本市場アクセスは、シニア債務にとって強い支えになる。FitchやS&Pの外部格付も、少なくとも公開検索で確認できる範囲では、政府支援・システム上の重要性を織り込む高い水準にある。ただし、シニア債であっても、中国政府の明示保証ではない。投資家は、発行体の支払能力と支援期待を評価するのであって、ソブリン債と同じ権利を持つわけではない。

第二に、海外支店発行債は、支店所在地、準拠法、支払通貨、税務、制裁、決済、現地規制を確認する必要がある。BOCOMは香港支店などを通じてオフショア市場で発行することがある。支店債は通常、本店の銀行債務と近い分析対象になるが、投資家の実務上の回収・支払リスクは、発行支店、準拠法、決済システム、現地規制、外貨流動性の影響を受け得る。特に短期証券や外貨建て証券では、連結ベースの人民元流動性だけでなく、外貨・オフショア市場アクセスを見るべきである。

第三に、非資本TLAC債は、普通シニア信用に近く見えても、破綻処理・損失吸収の文脈で見る必要がある。BOCOMは2024年以降、国内TLAC非資本債を発行している。2025年年報では、2024年TLAC非資本債01がRMB30bn、2025年TLAC非資本債01A / 01B / 02A / 02B / 03A / 03Bが合計RMB100bn残高として示されている。TLAC非資本債は、資本性証券より上位であっても、発行目的は破綻処理時の総損失吸収能力を満たすことであり、普通の営業債務と同じ感覚で評価すべきではない。法的順位、損失吸収条件、規制裁量、元本削減・転換、支払停止、破綻処理制度を確認する必要がある。

第四に、Tier 2資本債は、明確に損失吸収性を持つ。2025年年報では、Tier 2債の残高がRMB213.0bn、劣後債がRMB4.8bnと示され、Tier 2には規制上のトリガー発生時の元本削減機能があると説明されている。これらは、BOCOMが平常時に強い発行体であることとは別に、PONV、規制介入、自己資本不足、破綻処理に近い局面では元本損失を負う可能性がある。Tier 2投資家は、シニア支援期待をそのまま下位証券に移植してはいけない。

第五に、優先株やその他資本性証券は、配当停止、損失吸収、規制裁量、コール、再投資リスク、価格ボラティリティを伴う。2025年末の親会社帰属持分には、優先株主に帰属する持分RMB45.0bn、永久債保有者に帰属する持分RMB81.5bnが含まれる。資本性証券では、発行体の存続可能性が高いことと、投資家がクーポン・配当を確実に受け取ることは同じではない。規制当局が銀行システムを安定させる局面では、シニア債務の保護と下位証券の損失吸収が同時に起こり得る。

第六に、子会社債はBOCOM本体債ではない。金融リース、信託、保険、理財、海外証券などの子会社は、BOCOMグループの一部であり、商業的・戦略的支援期待を持ち得る。しかし、親会社保証がない限り、投資家の請求権は子会社に対するものである。Bank of Communications Financial Leasingのような発行体は、親会社との関係、サポートの強さ、規制上の扱い、資産リスク、外部格付を個別に確認する必要がある。BOCOM本体の強いシニア信用だけで子会社債のリスクを決めるのは危険である。

構造的に最も重要な結論は、BOCOMのシニア発行体信用は強い一方、下位証券や子会社債のスプレッドを評価するには、シニア格付だけでは足りないということだ。BOCOMの信用分析は、発行体、支店、子会社、順位、損失吸収条項、通貨、準拠法、規制裁量を分解して初めて意味を持つ。

6. Capital Structure, Liquidity and Funding

BOCOMの資本構造は、普通株式資本、内部留保、優先株、Tier 2、非資本TLAC、発行債券、譲渡性預金、顧客預金によって構成される。信用上最も重要なのは、普通株式資本と預金である。2025年のA株発行は、普通株式資本を厚くし、核心Tier 1比率を改善させた。資本市場でのTLAC・Tier 2発行は、規制要件を満たす上で重要だが、下位・損失吸収的な性格を持つため、投資家は普通の資金調達と同じには扱えない。

2025年末の自己資本は、純資本RMB1.59兆、核心Tier 1資本RMB1.14兆、RWA RMB9.96兆であった。総自己資本比率は15.96%、Tier 1比率は12.70%、核心Tier 1比率は11.43%である。2024年末には総自己資本比率16.02%、Tier 1比率12.11%、核心Tier 1比率10.24%であったため、2025年は総自己資本比率こそ小幅低下したが、核心Tier 1比率は大きく改善した。これは、A株発行の効果がTier 1の質を高めたためである。

2026年第1四半期末には、総自己資本比率15.61%、Tier 1比率12.48%、核心Tier 1比率11.25%となった。Q1の総資産・貸出成長を考えれば、資本比率の小幅低下は自然である。初回カバレッジ時点では資本不足は見えないが、今後の貸出成長、政策的信用供給、信用コスト、不動産・リテールリスク、配当、TLAC要件、RWA算定、規制変更によって、資本余裕は変動し得る。BOCOMのシニア信用では、資本比率そのものより、必要なら普通株式資本を補強できる制度的支えがあるかが重要である。2025年のMOF等へのA株発行は、その点で強いシグナルである。

資本の質では、核心Tier 1の増加が特に重要である。Tier 2や優先株は総自己資本比率を支えるが、損失吸収順位は普通株式に次ぐ、または普通債務より下位にある。投資家がシニア債を見る場合、資本性証券は損失吸収バッファーとしてプラスに働く。逆に、Tier 2や優先株の投資家にとっては、自分自身が損失吸収バッファーである。BOCOMの資本構成を見る際には、「銀行全体にとっての支え」と「当該証券投資家にとってのリスク」を分ける必要がある。

流動性はおおむね良好である。2025年第4四半期の日次平均LCRは123.02%、四半期末NSFRは110.38%であった。流動性比率は75.88%で、2024年末73.34%、2023年末64.92%から改善した。高品質流動資産には、現金、ストレス下で引き出せる中央銀行準備、適格債券などが含まれる。BOCOMの大きな顧客預金、政府債・政策性金融債投資、中央銀行アクセスは、流動性の重要な支えである。

ただし、流動性の余裕は他の大手国有銀行と比較して常に十分厚いとは限らない。LCR 123%とNSFR 110%は規制水準を上回るが、ショック耐性を無制限に示す数字ではない。BOCOMは2026年第1四半期末に、預金RMB9.69兆に加え、譲渡性預金RMB1.37兆、発行債券RMB655.7bnを持っていた。市場性調達へのアクセスは強みだが、市場ストレス時にはロールオーバーコスト、外貨調達、投資家需要、支店発行、TLAC発行のタイミングが問題になる。シニア債投資家は、連結LCRだけでなく、通貨別・法域別の流動性も確認したい。

顧客預金の構成も重要である。2026年第1四半期末の預金はRMB9.69兆で、法人預金が54.57%、個人預金が43.86%を占めた。要求払預金は30.29%、定期預金は68.14%である。定期預金比率が高いことは、流出リスクを抑える面もあるが、預金コストが下がりにくく、NIMを圧迫しやすい。中国銀行セクターでは預金金利の調整や政策金利低下が進んでも、顧客獲得競争や定期化でコスト低下が遅れることがある。BOCOMのNIM低下は、この預金構造とも関係する。

発行債券とTLACは、今後の資本・負債構造で重要性が増す。2025年年報では、発行済み債券の期末残高はRMB454.4bn、Tier 2債はRMB213.0bn、劣後債はRMB4.8bnと示された。2024年と2025年にはTLAC非資本債の発行も増え、2025年発行分だけで残高RMB100bnが示されている。G-SIBであるBOCOMにとって、TLAC要件への対応は規制上避けられない。これはシニア債権者にとって損失吸収バッファーを厚くする面がある一方、TLAC債自体の投資家にとっては破綻処理時の損失吸収リスクを意味する。

BOCOMの調達構造は、預金基盤、規制当局との関係、国内外の市場アクセス、D-SIB / G-SIB指定に支えられる。一方、NIM低下、預金コスト、貸出成長による資本消費、外貨・海外支店調達、TLAC発行ニーズ、下位証券の損失吸収リスクは残る。

7. Rating Agency View

BOCOMの外部格付は、中国大手銀行としての政府支援蓋然性と、スタンドアロン信用力の両方を反映する。今回の初回カバレッジでは、FitchとS&Pは公開検索スニペットを確認したにとどまり、格付機関の本文全体は取得していない。公開スニペットでは、Fitchが2025年5月にBOCOMのLong-Term IDRをA、Outlook Stableで確認し、2025年9月の香港支店短期ノートに関するスニペットでは、Long-Term IDR A / Stable、Short-Term IDR F1+、Shareholder Support Rating a、Viability Rating bbb-が示されていた。S&Pの2025年2月スニペットでは、BOCOMと子会社の長期 / 短期発行体格付がA- / A-2、Outlook Stableで確認されたとされる。

格付の読み方で重要なのは、発行体格付が単体の収益力だけで決まっていない点である。Fitchスニペット上のVR bbb-は、BOCOMのスタンドアロン信用力が、政府支援を織り込んだLong-Term IDR Aより低く評価されていることを示唆する。これは、低いNIM、強くないROA / ROE、不動産・リテール信用リスクを抱えるBOCOMの財務プロファイルと整合する。ただし、本稿では格付本文を直接確認していないため、格付機関の詳細なノッチングや感応度は断定しない。

この点はシニア債ではプラスに働く。中国当局がBOCOMのような大手国有D-SIB / G-SIBを無秩序に破綻させる蓋然性は低く、システム上の重要性は発行体信用を強く支える。MOFの大株主としての存在、2025年のA株引受、PBOC/NFRAのD-SIB指定、G-SIBとしての国際的扱いは、格付機関が支援蓋然性を見る材料になりやすい。シニア債投資家にとって、BOCOMは中国ソブリン・規制当局・金融システム安定と密接に連動した信用である。

一方で、格付支援はすべての証券を等しく守るわけではない。Tier 2、優先株、その他資本性商品、非資本TLACは、破綻処理やPONVの文脈で損失吸収を求められる可能性がある。格付機関も通常、シニア債と下位証券を同じノッチで扱わない。政府支援が強い銀行でも、資本性証券の投資家が損失を負わないとは言えない。BOCOMの外部格付を使う際には、発行体格付、預金格付、シニア無担保格付、TLAC格付、Tier 2格付、優先株格付を分けて確認する必要がある。

Moody'sについては、今回の作業では親会社BOCOMの一次的な格付資料を直接確認できていない。子会社や関連発行体に関する検索結果は存在したが、本稿では親会社のMoody's格付を断定しない。将来の更新では、BOCOM公式IR、Moody's、または信頼できる格付一覧から、親銀行の長期預金・発行体・BCA・政府支援ノッチ・アウトルックを確認したい。初回カバレッジでは、FitchとS&Pの公開情報、会社開示、規制上の重要性を中心に評価する。

格付セクションの結論は、BOCOMのシニア発行体信用は政府支援・システム重要性に支えられる一方、下位証券や子会社債ではシニア発行体格付だけで投資リスクを測るべきではない、ということである。

8. Credit Positioning

BOCOMの信用ポジショニングは、シニア債と下位証券で分けるべきである。シニア発行体信用では、MOF大株主、D-SIB / G-SIB指定、RMB15兆超の総資産、RMB9兆超の顧客預金、資本補強実績、規制水準を上回る流動性が強い支えになる。中国当局がBOCOMのような大手国有銀行を無秩序に処理する蓋然性は低く、シニア信用は中国ソブリン・規制当局・金融安定政策と密接に結び付く。

一方、BOCOMは高収益銀行ではない。2025年のROA 0.63%、ROE 8.38%、NIM 1.20%は、信用損失を厚い収益で吸収する銀行というより、制度的重要性、資本、預金、支援期待に支えられる銀行であることを示す。四大行との厳密な相対比較には別途ピア表が必要だが、少なくともBOCOM単体の収益性は、シニア信用の強さを説明する主因ではない。

TLAC債、Tier 2、優先株、その他資本性証券は、シニア債より慎重に扱う。BOCOMがシステム上重要であることは、シニア債務の安定性を高める一方、破綻処理や資本再建時に下位証券が損失吸収を求められる理由にもなる。子会社債も、親会社支援期待と契約上の保証を分ける必要がある。BOCOMのシニア信用は強いが、下位証券・支店債・子会社債では、発行体、順位、通貨、準拠法、損失吸収条項を個別に読むべきである。

9. Key Credit Strengths and Constraints

主な強みは、(1) 国内D-SIBカテゴリー3とG-SIBとしての制度的重要性、(2) 2026年第1四半期末RMB9.69兆の顧客預金、(3) 2025年A株発行による核心Tier 1資本の補強、(4) 2025年末NPL比率1.28%、引当カバレッジ208.38%という見出し資産の質、(5) LCR 123.02%、NSFR 110.38%という規制水準を上回る流動性である。これらは、シニア発行体信用の支えとして明確である。

主な制約は、(1) 2025年NIM 1.20%、ROA 0.63%、ROE 8.38%という低収益性、(2) 不動産業向けNPL比率4.20%、カードNPL比率2.68%、カード延滞比率5.09%に見える不動産・リテール信用圧力、(3) 政策的貸出による収益性・資本消費の制約、(4) 本体・支店・TLAC・Tier 2・優先株・子会社債の構造的複雑性、(5) 中国ソブリン・規制支援環境への依存である。BOCOMは強い銀行だが、完全に独立した民間信用ではなく、中国システム信用の一部である。

10. Downside Scenarios and Monitoring Triggers

BOCOMのシニア信用が明確に悪化するのは、単一指標ではなく、複数の支えが同時に弱くなる場合である。最も重要な下方シナリオは、不動産・リテール・中小企業信用の悪化が、NPL、特別注意貸出、延滞、引当、信用コストに広がり、低NIMのため利益で吸収しきれなくなるケースである。

具体的には、NIMが1.2%を下回って純利息収益が減少する、不動産業向けNPL比率4.20%や住宅ローンNPL比率1.01%が大きく悪化する、カード延滞比率5.09%や個人事業ローンの指標が上昇する、核心Tier 1比率が再び10%台前半へ低下する、LCR / NSFRや外貨調達に圧力が出る、または中国ソブリン・政府支援評価・D-SIB / G-SIB規制が悪化する場合に警戒を強める。FY2026中間・第2四半期・第3四半期では、NIM、純利息収益、信用減損、NPL比率、特別注意貸出、延滞、引当カバレッジ、核心Tier 1比率、預金構成、LCR / NSFR、TLAC発行、MOF・HSBC・SSFの株主変化、Fitch / S&P / Moody'sの格付アクションを確認したい。

11. Credit View and Monitoring Focus

本稿時点のBOCOMのシニア発行体信用水準は、中国国有大手銀行として強いが、その強さは高収益性ではなく、規模、預金、資本、MOF大株主、D-SIB / G-SIB指定、政府支援期待に依存する。方向性は短期的には安定と見るが、NIM低位、延滞・リストラ貸出、不動産・リテール信用、資本比率、LCR / NSFR、外貨調達には緩やかな悪化リスクがある。急変蓋然性は現時点で低いが、ソブリン支援評価の弱化、資産の質の急悪化、預金・外貨流動性ストレスが重なる場合には見方を見直す。

結論として、シニア債では政府支援期待と制度的重要性を重視できるが、非資本TLAC、Tier 2、優先株、海外支店・子会社債では、損失吸収順位と発行体差を明確に分ける必要がある。

Short Summary & Conclusion

BOCOMは、MOF大株主、D-SIB / G-SIB指定、大規模な資産・預金基盤、2025年の普通株式資本増強に支えられる中国の大手国有銀行であり、シニア発行体信用は強い。一方、NIMは1.2%台前半、ROAは0.6%台と収益性は厚くなく、不動産、カード、個人事業ローン、消費ローンの信用コストを監視する。シニア債では政府支援期待と制度的重要性を重視できるが、非資本TLAC、Tier 2、優先株、海外支店・子会社債では、順位、損失吸収、発行体、通貨、準拠法を分けて評価すべきである。

Sources

Company and Primary Sources

Rating, Regulatory and Supplementary Sources

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