Issuer Credit Research
Issuer Flash: China Merchants Bank Co., Ltd.
Issuer Flash: China Merchants Bank Co., Ltd.
報告日: 2026-11-02 イベント日: 2026-10-30 イベント名: 2026年第3四半期決算
1. Flash Conclusion
China Merchants Bankの未監査第3四半期決算は、リテール銀行業務モデルにおける一部の改善と継続的な圧力の双方を示しつつ、シニア債の信用力が概ね安定しているとの評価を裏付ける内容となった。第3四半期の純利鞘(NIM)は1.82%と、それまでの縮小を経て第2四半期から横ばいとなり、先進的手法に基づくグループの普通株式等Tier 1(CET1)比率は6月末の14.07%から14.39%に上昇した。顧客預金残高と開示ベースの流動性も引き続き潤沢な水準を維持している。これらは信用力にとって前向きな動きだが、NIMが1四半期にわたり安定したことだけでは、運用資産利回りの低下や今後の預金調達コストについて、持続的な底打ちを確認できたとはいえない。
信用コストと資産健全性の先行指標が、こうした改善を相殺する主な懸念材料となっている。グループの9カ月累計の年率換算信用コスト比率は上期の0.69%から0.72%に上昇し、要注意先債権比率も1.53%から1.59%に上昇した。第3四半期の予想信用損失はRMB12.60bnと、前年同期のRMB8.73bnから増加した。グループの不良債権(NPL)比率は0.94%で横ばいとなり、貸倒引当金カバー率も389.39%へ小幅に回復したものの、早期警戒対象債権と信用損失の増加は、今後の収益性と内部留保による資本蓄積を評価するうえで引き続き重要である。
したがって、シニア債の信用力は引き続き預金基盤、収益力、引当金および資本によって支えられているものの、リテール向け信用リスクと低金利環境に伴うリスクが解消されたと判断するだけの根拠はない。CET1比率の回復はTier 2債およびAT1債の保有者にとって好材料だが、各証券固有の弁済順位、損失吸収条項およびクーポン支払条件については未確認である。また、システム上の重要性や株主との関係は、政府による法的な保証の存在を意味するものではない。
2. Earnings Defence and Margin: Stabilisation for One Quarter
第3四半期の営業純収益は前年同期比6.48%増のRMB86.63bn、株主帰属利益は同3.06%増のRMB40.03bnとなった。9カ月累計では、それぞれRMB264.76bn、RMB116.48bnとなり、前年同期比5.37%増、2.38%増だった。利益成長率が収益成長率を下回ったことは、収益の増加が減損費用の増加やその他の変動によって一部相殺されたことを示している。これは中核的な事業基盤の競争力が損なわれたことを意味するものではないが、収益増加が損失吸収力を持つ利益の拡大につながる程度を制約している。
グループの第3四半期のNIMと預貸金利鞘は、それぞれ1.82%、1.75%となり、いずれも第2四半期から横ばいだった。9カ月累計のNIMも1.82%で、前年同期を5bp下回った。経営陣は、過去の最優遇貸出金利(LPR)引き下げに伴う貸出金利の改定、実効的な資金需要の弱さ、運用資産利回りへの下押し圧力が引き続き制約要因になっていると説明している。9カ月累計の利息獲得資産の平均利回りは前年同期の3.08%から2.80%に低下した一方、顧客預金の平均調達コスト率も1.22%から0.95%に低下した。前年同期比での調達コスト低下は、9カ月累計における運用資産利回りの低下を緩和する役割を果たした。ただし、こうした前年同期比の平均値だけでは、前四半期比でNIMが安定した要因を特定することはできない。開示資料では、顧客預金金利を今後どの程度追加的に引き下げられるかは定量化されていない。運用資産利回りの低下が続く一方で預金調達コストの低下による恩恵が縮小する場合、純金利収益を維持するには、バランスシートのさらなる拡大や手数料収入の増加が必要になる可能性がある。
9カ月累計の純手数料・コミッション収益は、前年同期のRMB56.20bnからRMB58.61bnに増加した。ウェルスマネジメント関連の手数料収入は13.71%増のRMB23.50bnとなった一方、銀行カード関連の手数料収入は10.34%減のRMB9.44bnとなった。これらの数値は、同行の事業基盤が収益源を多様化できることを裏付けている。ただし、金融商品の販売手数料は市場環境や顧客の取引動向によって変動し得る。手数料収入が利鞘縮小による収益減少を持続的に補えることや、商品販売時の行為規範に関するリスクおよびレピュテーションリスクを解消できることまで示すものではない。
3. Credit Costs and Asset Quality
| 指標 | 2026年9月末 / 9カ月累計 | 比較対象 | 対象範囲および信用面での評価 |
|---|---|---|---|
| NIM | 1.82% Q3 | 1.82% Q2 | グループ;四半期ベースの利鞘は横ばい |
| NPL比率 | 0.94% | 2025年末 0.94% | グループ;表面上は安定 |
| 要注意先債権比率 | 1.59% | 6月末 1.53%;2025年末 1.43% | グループ;初期段階の信用リスクが上昇 |
| 貸倒引当金カバー率 | 389.39% | 6月末 385.1% | グループ;小幅に回復し、開示上は潤沢なバッファーを維持 |
| 年率換算信用コスト比率 | 0.72% | 上期 0.69% | グループ;年初来累計ベースの比率 |
| CET1比率(先進的手法) | 14.39% | 6月末 14.07% | グループ;開示比率が回復 |
| 平均LCR | 180.30% Q3 | Q2比0.34パーセントポイント上昇 | グループ;日次平均であり、四半期末時点のLCRではない |
9月末のグループNPL残高はRMB70.07bnで、NPL比率は0.94%と横ばいだった。しかし、要注意先債権比率は2025年末から16bp上昇し、延滞債権比率も1.25%から1.32%に上昇した。これらの区分は信用リスクの警戒指標であり、最終的に発生する信用損失の推計値ではない。それでも、その変化の方向性は重要である。報告ベースのNPL残高が安定していても、新規不良債権の発生と積極的な不良債権処分が同時に進んでいる可能性があるためだ。
銀行単体のリテール向けNPL比率は2025年末の1.08%から1.19%に上昇し、クレジットカードのNPL比率は1.74%から1.93%、小口金融(マイクロファイナンス)のNPL比率は1.22%から1.39%に上昇した。会社ベースのクレジットカード貸出残高はRMB938.99bnからRMB891.00bnに減少した一方、カード関連NPL残高はRMB16.37bnからRMB17.23bnに増加した。この組み合わせは、縮小するポートフォリオにおいて信用リスクへの圧力が継続していることと整合的だが、特定の融資審査方針が採用されていることを証明するものではない。会社ベースの9カ月累計のカード関連NPL新規発生額は前年同期比RMB5.56bn増加し、RMB34.71bnとなった。会社全体のNPL処分額はRMB53.45bnで、このうちRMB31.89bnが証券化によるものだった。こうした処分は、NPL残高が安定していることだけでは、基礎的な新規不良債権の発生状況が安定していると判断できない理由を説明している。本レポートでは、処分取引による受取額や投資家の遡及請求権については分析していない。
会社ベースの不動産開発向け貸出残高はRMB317.03bn、NPL比率は3.89%となり、2025年末の4.64%から低下した。ただし、同NPL比率は依然としてグループ全体の水準を大きく上回っており、会社ベースの貸出残高は、前回の上期Flashで引用したグループベースの数値とは対象範囲が異なる。改善は好材料だが、個別デベロッパーの経営回復を裏付けるものではなく、担保や与信集中に関する不確実性も解消されていない。リテール向け貸出と不動産向け貸出の動向は、それぞれ分けて監視すべきである。
9カ月累計の予想信用損失総額はRMB41.78bnと前年同期比25.26%増加し、このうち貸出金に係るものがRMB39.71bnだった。この総額は年率換算信用コスト比率とは異なる指標であり、貸出金以外の項目も含んでいる。開示された四半期損益計算書から算出すると、第3四半期の信用損失はRMB12.60bnとなり、2025年第3四半期のRMB8.73bnから増加した。389.39%という貸倒引当金カバー率は、会計上の開示比率として実質的に厚い損失吸収バッファーを示しているが、将来の損失認識やポートフォリオの悪化が限定的にとどまることを保証するものではない。
4. Capital, Liquidity and Bondholder Implications
グループの先進的手法に基づくCET1比率、Tier 1比率および総自己資本比率は、それぞれ14.39%、16.89%、18.65%となり、上期Flashで引用した6月末の14.07%、16.59%、18.33%から上昇した。グループのCET1純資本額はRMB1,149.87bn、レバレッジ比率は8.23%となり、後者は6月末の7.94%から上昇した。同行は標準的手法(加重方式)に基づくグループの各比率も開示しており、それぞれ12.08%、14.18%、15.28%だった。両手法は並行して適用されており、算出された数値を混同すべきではない。同行によれば、適用される最低所要比率はそれぞれ8.25%、9.25%、11.25%であり、レバレッジ比率の所要水準は4.375%である。規制上の計算に基づく水準と、経営陣が維持を目指す資本バッファーの水準は同一ではなく、後者については未確認である。
未払利息を除く顧客預金残高はRMB10.26tnに達し、グループ負債の82.93%を占めた。この経営陣による業績説明上の数値は、未払利息を含む財務諸表上のRMB10.34tnとは異なる。第3四半期の平均流動性カバレッジ比率(LCR)は180.30%、期末時点のLCRは201.23%だった。両者は別の測定値であり、同一の指標として扱うことはできない。預金基盤と開示された流動性指標は、シニア債権者にとっての資金調達安定性の評価を支える。ただし、これらはいずれも、外貨流動性がすべての法人や満期において自由に利用可能であることを示すものではない。安定調達比率(NSFR)および通貨別の詳細な満期構成については評価していない。
SSCでの議論では、CET1比率の低下、カード関連与信の質の悪化、長期にわたる利鞘縮小が同行の信用力の強靭性を損なう可能性が指摘されていた。第3四半期の実績は、これらの仮説を部分的に検証する材料となった。CET1比率が回復し、四半期ベースのNIMが安定した一方、カード関連NPL残高、要注意先債権および信用損失には引き続き圧力がみられた。ただし、今回の実績は、議論で提案された市場でのリプライシングに関する閾値を検証するものではなく、経営陣のCET1比率目標を確認できたわけでもない。これらのより広範な仮説は、次回の発行体サマリーに向けて引き続き検討課題として残る。
5. What To Watch Next
今後は、運用資産の金利改定と預金調達コストの引き下げが進むなかで、第3四半期に横ばいとなったNIMが維持されるか、クレジットカードおよび小口金融の延滞債権が、不良債権処分後も損失として顕在化するか、また、リスク加重資産(RWA)の増加、利益分配および資本性証券に関する意思決定を踏まえても、回復したCET1比率を維持できるかを監視する。次回の詳細開示では、NSFR、外貨調達、不動産デベロッパーおよび地方政府融資平台(LGFV)向け与信の集中度、問題債権の処理方法と回収状況を確認する必要がある。格付機関による最新の一次資料、マーケットスプレッド、および個別のシニア債、Tier 2債、AT1債の関連書類は入手できていない。このため、本レポートでは個別証券レベルの回収率やバリュエーションに関する結論は示していない。
6. Sources
- China Merchants Bank Co., Ltd., Third Quarterly Report of 2026 (H Share)、未監査、2026年10月30日公表。https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/1030/2026103001614.pdf
- China Merchants Bank Co., Ltd., 2026 Interim Results Announcement、2026年8月28日。https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801289.pdf
- 2026年5月20日付の既存発行体サマリー、2026年9月2日付の上期Issuer Flash、および2026年6月4日付のSSCでの議論。従来の信用評価およびモニタリング上の文脈を把握するための参照資料であり、SSCでの議論は独立した証拠ではない。