Issuer Credit Research

Issuer Flash: Nomura Holdings, Inc.

Issuer Flash: Nomura Holdings, Inc.

レポート日: 2026-07-29 イベント日: 2026-07-29 イベントタイトル: 2027年3月期第1四半期決算

1. Flash Conclusion

Nomuraの第1四半期決算は、経常性収益基盤の拡大が利益の下支え水準を引き上げているとの見方を強める内容となったが、同社の信用力を制約する市場リスクおよびバランスシート・リスクが解消されたわけではない。純収益は前四半期比19%増のJPY686.7bn、税前利益はほぼ倍増のJPY211.5bn、株主帰属純利益は97%増のJPY145.6bnとなった。Wealth Managementの経常収益費用カバー率は76%に上昇し、Investment Managementの運用資産残高はJPY156.4tnに達したほか、4部門すべてで業績が改善した。

信用面でポジティブなのは、収益構成の多様化が進むなかで営業レバレッジが発現した点である。グループ経費が前四半期比でわずか1%増にとどまる一方、収益は19%増加した。ただし、Wholesaleは過去最高となったEquities部門の業績を主因に、4部門合計税前利益の44%に相当するJPY93.3bnを稼ぎ出したほか、Investment Managementも買収事業からの収益および投資利益の恩恵を受けた。これらは同社の収益創出力を示すものではあるが、景気循環を通じた平常的な収益水準とみなすべきではない。

資本および流動性は引き続き信用力を支えているが、バランスシートの資本・資金集約度は高まった。速報ベースのリスクアセットはJPY24.5tnからJPY25.5tnへ、ネット・レバレッジは12.2xから12.9xへ上昇した。Tier 1比率は15.6%から14.7%へ、総自己資本比率は16.4%から15.6%へ、レバレッジ比率は5.18%から4.64%へ低下した一方、CET1比率は12.8%に対して12.9%と概ね横ばいだった。同時に、流動性ポートフォリオはJPY12.7tn、高品質流動資産はJPY8.9tnへ増加し、流動性カバレッジ比率も196.9%と高水準を維持した。持株会社のシニア債保有者にとって、堅調な利益と流動性は支援材料であるが、RWAの増加、市場リスクの活用、資本配分、およびTLAC適格債務の構造上の位置付けは、引き続き主要なモニタリング項目である。既存エクスポージャーに対する発行体レベルのファンダメンタルズ判断はhold/monitorを維持し、個別証券の選別は引き続きスプレッド、弁済順位、契約条件および損失吸収特性を条件とする。

2. What Was Announced

Nomuraは、2026年6月30日までの3カ月間について、純収益JPY686.7bn、税前利益JPY211.5bn、株主帰属純利益JPY145.6bnを計上した。非金利費用はJPY475.2bnで、前年同期比31%増となった一方、前四半期比では1%増にとどまった。

Wealth Managementの税前利益は、経常収益とフロー収益がともに増加したことから、16%増のJPY71.1bnとなった。経常収益資産への純流入額は過去最高のJPY539.6bnとなり、17四半期連続の純流入を記録したことで、同資産残高はJPY31.7tnへ増加した。Investment Managementの税前利益はJPY18.1bnからJPY45.0bnへ増加した。事業収益には、2025年12月に買収したMacquarieのパブリック・アセット・マネジメント事業が寄与し、JPY12.1bnの投資利益にはAmerican Century Investmentsおよびポートフォリオの評価益が含まれた。運用資産残高はJPY156.4tnへ増加したが、国内アクティブファンドへの資金流入の一部は、日本株ETFおよび海外事業の一部からの資金流出によって相殺された。

Wholesaleの税前利益は2倍超のJPY93.3bnとなった。Global Markets収益は、Equities収益JPY179.4bnに牽引され、26%増のJPY318.7bnとなった。Investment Banking収益は好調だった第4四半期から9%減少したものの、第1四半期として過去最高のJPY50.4bnに達した。Bankingの税前利益はJPY3.6bnと引き続き小規模だった一方、預金スイープの開始後、The Nomura Trust and Bankingの預金はJPY329.7bn増加し、JPY1.66tnとなった。

指標 2027年3月期第1四半期 変化/比較 クレジット評価
純収益 JPY686.7bn 前四半期比+19%、前年同期比+31% 幅広い収益成長と強い営業レバレッジ
税前利益/株主帰属純利益 JPY211.5bn / JPY145.6bn 前四半期比+96% / +97% 内部資本創出力は強いが、四半期実績の単純年率換算は不適切
Wealth Management税前利益 JPY71.1bn 前四半期比+16% 経常収益基盤の厚みが利益の下支え水準を引き上げる
Investment Management税前利益/AUM JPY45.0bn / JPY156.4tn 前四半期比+148%、AUMは過去最高 規模拡大はポジティブだが、買収効果、資金フローおよび投資利益を切り分けて評価する必要
Wholesale税前利益 JPY93.3bn 前四半期比+116% フランチャイズの業績は好調だが、循環性の高い寄与が最大
RWA/ネット・レバレッジ JPY25.5tn / 12.9x 3月末時点JPY24.5tn / 12.2x 資本・資金集約度の上昇が利益改善の一部を相殺
CET1/Tier 1/総自己資本比率 12.9% / 14.7% / 15.6% 3月末時点12.8% / 15.6% / 16.4%、6月末速報値 CET1は概ね安定したが、エクスポージャーとRWAの拡大に伴い他の比率は低下
連結レバレッジ比率 4.64% 3月末時点5.18%、6月末速報値 バランスシート拡大局面では、エクスポージャー基準の余力低下を注視する必要
HQLA/LCR JPY8.9tn / 196.9% 3月末時点JPY7.9tn / 214.0% 流動資産バッファは拡大し、LCRは低下したものの引き続き高水準

3. Credit Read-Through

最も持続性の高い改善はWealth Managementでみられた。経常収益は、前四半期に計上された半期ごとのアドバイザリー手数料がなかったにもかかわらず、前四半期比4%増のJPY59.2bnとなり、経常収益費用カバー率も72%から76%へ上昇した。過去最高の資金流入と資産基盤の拡大は、グループROEの表面的な数値よりも、利益の下支え水準が高まっていることを示す有力な指標である。それでも、今回の業績は良好な市場環境の恩恵を受けており、顧客資産と手数料収益は資産価格や投資家の取引活動に引き続き左右されるため、安定的な付保預金と同等ではない。

Investment Managementも収益の多様化に寄与しているが、増益の質は一様ではない。買収したMacquarie事業による運用報酬の増加は戦略的にポジティブである一方、ACI関連利益およびポートフォリオ評価益は経常性が低い。次の検証点は、拡大したプラットフォームが顧客維持、純資金流入、手数料マージンおよびコストシナジーを持続できるかどうかである。報告された過去最高のAUMだけでは、収益の持続性が同程度に改善したとはいえない。

Wholesaleの四半期業績は、グローバルな執行力と国際事業基盤の広がりを裏付けた一方、収益が市場環境に左右されやすいという既存の集中リスクも示した。増収の大部分はEquitiesが牽引した。Nomuraは、当四半期の平均1日VaRがJPY6.0bn、四半期末VaRがJPY6.3bnだったと開示したが、比較可能な前四半期平均値が確認されていないため、前四半期との方向性比較は行わない。開示されたVaRの数値だけでは、過去最高となったWholesale収益のリスク調整後の持続性を立証できない。単独の信用改善要因としてではなく、RWA、レバレッジ、担保および資金調達需要と併せて評価すべきである。

総資産は、主としてトレーディング資産および関連負債の拡大により、3月末比9%増のJPY68.2tnとなった。株主資本はJPY3.83tnへ増加したが、RWAとレバレッジはそれを上回るペースで拡大した。その結果、Tier 1比率、総自己資本比率およびレバレッジ比率は低下したものの、CET1比率12.9%、RWAベースTLAC比率29.4%、および強固な流動性指標を踏まえれば、直ちにストレスを示すシグナルではない。ただし、規律ある資本配分の重要性は高まっている。強い利益が信用力を最も効果的に支えるのは、内部留保と流動性が、WholesaleおよびBankingの成長、買収、配当、自社株買いに見合うペースで維持される場合である。

債券保有者にとって、当四半期の業績は返済能力を改善させるが、構造上の弁済順位を変えるものではない。Nomura Holdingsは、規制対象子会社からの上流配当に依存する金融持株会社であり、TLAC適格シニア債は、引き続き破綻処理時に損失を吸収するよう設計されている。現在のスプレッドおよび個別証券の契約条件を確認しない限り、相対価値または個別証券レベルの判断は行わない。

4. What To Watch Next

最初のフォローアップ項目は、8月6日に公表される監査人レビュー済みの四半期財務諸表と、その後の正式な規制開示における6月末時点の資本、レバレッジ、TLACおよび流動性指標の確定値である。経営陣のカンファレンスコールにおける質疑応答についても、Wholesale収益の正常化、RWAに対するリスク選好、株主還元、および買収した資産運用事業の統合効果に関するガイダンスを確認する必要がある。

事業面では、今後2四半期において、Wealth Managementが市場環境の悪化時にも経常収益資産への資金流入と費用カバー率を維持できるか、Investment Managementが増加したAUMを持続的な手数料マージンと顧客維持につなげられるか、またWholesaleがRWAやレバレッジを不均衡に増加させることなく収益の多様性を維持できるかが試される。既存の持株会社エクスポージャーについて、イベントレベルのファンダメンタルズ判断はhold/monitorを維持する。個別証券の投資判断に先立ち、法人単位の流動性、有担保・無担保調達の構成、子会社からの上流配当余力、個別債務の弁済順位、損失吸収条件および現在の価格水準を確認する必要がある。

5. Sources