Issuer Credit Research

BDO Unibank Issuer Summary

Issuer: Bdo Unibank | Document: Issuer Summary | Date: 2026-05-13

Report date: 2026-05-13
Issuer: BDO Unibank, Inc.
Sector: Philippines banking
Primary credit focus: 発行体信用、外貨・ペソ建てシニア債、預金主導の資金調達、資本・流動性、フィリピンソブリンとの連動

1. Business Snapshot and Recent Developments

BDO Unibank は、フィリピン最大の民間ユニバーサルバンクである。法人・個人向け貸出、預金、外国為替、資金決済、クレジットカード、信託、投資銀行、プライベートバンキング、リース・ファイナンス、生命保険、損害保険仲介、証券、送金を広く持つ総合銀行であり、信用分析上は「単一商品に依存するリテール銀行」ではなく、「国内最大の預金・貸出フランチャイズを持つフィリピン銀行」として見る必要がある。2025年年次報告書では、BDO は2025年12月31日時点で、総資産、顧客貸出、預金、信託資産、資本、国内支店・ATM網の各面で同国最大と説明している。BSP の銀行別統計でも、2025年12月末の Universal and Commercial Bank Group において、BDO は総資産PHP5.27tnで1位、総貸出・債権ネットPHP3.51tnで1位である。

この銀行のクレジットを見るうえで最初に押さえるべき点は、信用力の主な支えが、国内最大の顧客接点と預金基盤にあることである。2025年末の連結総資源はPHP5.43tn、総顧客貸出はPHP3.65tn、預金はPHP4.19tn、資本はPHP644bnである。支店・営業拠点は1,996、テラーマシンは7,716、信託資産はPHP2.6tnで、規模そのものが調達の粘り、顧客分散、手数料収入、資本市場アクセスにつながっている。BDO は SM Investments Corporation を中心とする SM Group と関係がある民間銀行だが、政府系銀行ではない。したがって、政府支援やソブリン連動を議論する場合も、明示保証ではなく、フィリピン最大級銀行としてのシステム上の重要性と、格付会社が見る支援可能性を区別する必要がある。

2025年から2026年1Qにかけての直近変化は、表面的にはかなり良好である。2025年通期の純利益はPHP87.2bnで前年比6%増、ROCE は14.4%だった。純金利収入は9%増、総顧客貸出は13%増、預金は10%増、CASA比率は68%だった。NPL比率は2024年末1.83%から2025年末1.68%へ低下し、NPLカバレッジは133%である。CET1比率は13.8%で、総自己資本比率は14.9%だった。2026年1Qも、会社リリース上の純利益はPHP20.1bnと前年同期比2%増、総顧客貸出は16%増のPHP3.8tn、預金は15%増、NPL比率は1.68%、NPLカバレッジは132%、CET1比率は13.3%である。SEC 17-Q上の連結純利益はPHP20.2bnであり、会社リリースのPHP20.1bnは親会社帰属利益の丸め値として扱う。

ただし、2026年1Qの読み方は単純な増益確認では足りない。純金利収入は11%増、貸出は二桁成長である一方、純利益の伸びは2%にとどまった。会社は、地政学リスクの変化を受けた予防的な準備金積み増しが利益を抑えたと説明している。SEC 17-Q でも、2026年1Qの金融資産に対する減損損失はPHP6.07bnで、前年同期のPHP2.86bnから大きく増えている。これは、単に収益性が鈍ったというより、急速な貸出成長と外部環境の不確実性に対して、銀行が引当を前倒しで積んでいる局面として読むべきである。信用上の焦点は、この引当増加が一過性の保守対応で済むのか、それとも貸出成長の後追いで信用コストが上がる前触れなのかにある。

直近指標を一言でまとめると、BDO は「強い銀行」であると同時に、「成長を資本と引当で吸収しながら走っている銀行」でもある。預金、支店網、顧客基盤、収益力は明確な強みである。一方で、貸出が二桁成長している局面では、現在のNPL比率だけで信用サイクルを判断できない。特に消費者ローン、中堅企業、地方展開、商業不動産、関連当事者取引、大企業集中の開示は、今後の確認項目として残る。主要な財務数値は後段の財務プロファイルで整理する。

2. Industry Position and Franchise Strength

BDO の最も重要な信用上の強みは、フィリピン国内銀行システムにおける規模と顧客接点である。BSP の2025年12月末統計では、BDO の総資産はPHP5.27tnで、2位のBank of the Philippine IslandsのPHP3.63tn、3位のMetropolitan Bank & Trust CompanyのPHP3.54tn、4位のLand Bank of the PhilippinesのPHP3.52tnを大きく上回る。ネット貸出でもBDO はPHP3.51tnで1位であり、2位のBPIのPHP2.52tnとの差が大きい。BDO が自社IRで示す2025年3Q時点の業界ランキングでも、資産シェア19%、顧客貸出シェア24%、預金シェア20%、AUMシェア37%とされ、国内銀行システムの中核にいることが確認できる。

銀行信用では、規模の大きさそのものが無条件のプラスではない。大きい銀行ほど、経済全体の信用サイクル、消費者の返済能力、大企業の資金繰り、ソブリン格付、規制当局の方針に広くさらされるからである。しかしBDOの場合、規模は資金調達の安定性と強く結びついている。2025年末の預金はPHP4.19tnで、総顧客貸出PHP3.65tnを上回る。2026年3月末のSEC 17-Qでも、預金はPHP4.43tn、貸出・その他債権ネットはPHP3.79tnであり、貸出拡大が市場性資金だけに依存しているわけではない。国内預金フランチャイズが強い銀行は、市場調達が閉じる局面でも貸出の急縮小や資産売却を迫られにくい。これは外貨シニア債保有者にとっても、銀行全体の流動性耐性として意味がある。

BDO の支店・ATM網は、フィリピンの地理的分散と金融包摂の文脈で重要である。2025年末時点で、BDO は1,996の支店・営業拠点、7,716のテラーマシンを持つ。年次報告書は、106の新規支店・オフィスを開設し、その多くが地方・農村部にあると説明している。これは、単に販売網が広いというだけでなく、預金獲得、個人向け貸出、保険・投資商品のクロスセル、中小企業との関係構築に効く。子会社のBDO Network Bank は、地方・未充足市場へのアクセスを担い、2025年末時点で637支店を持ち、ローンポートフォリオを20%増やした。信用上は、地方展開が顧客分散を進める一方、与信審査と回収の粒度が重要になる。

フランチャイズの強さは、収益源の広がりにも表れる。BDO は商業銀行を中心に、投資銀行、プライベートバンキング、リース、保険、信託、証券、送金を持つ。2025年の非金利収入はPHP84.6bnで前年比9%増、2026年1Qも非金利収入は6%増、保険業務収益は27%増だった。ただし、保険、証券、投資銀行は市場環境に左右される部分があり、商業銀行の預金・貸出ほど安定的ではない。競争面では、BPI、Metrobank、Land Bank などの有力行に加え、デジタル銀行や決済事業者もある。BDO の広い物理ネットワークは強みだが、2025年のコスト・インカム比率が57.4%へ上昇したように、固定費と投資負担も伴う。

SM Group との関係は、フランチャイズ評価で必ず分けて見る必要がある。BDO は SM Investments Corporation などが大株主であり、SM Group は小売、モール、不動産、ホテル、金融サービスに広がるフィリピン有数の民間コングロマリットである。この関係はブランド、顧客接点、国内経済への深いアクセスという面でプラスになりうる。ただし、本稿ではその効果を定量化できておらず、SM Group との関係を債券保有者の法的回収原資や明示支援として扱うべきではない。一方で、銀行信用では、関連当事者向けエクスポージャー、大企業グループ向け集中、グループ不動産サイクルとの連動を監視する必要がある。本稿で確認した公開資料だけでは、関連当事者向け与信の詳細や個別担保までは十分に整理できていないため、SM Group 関連の明示支援やリスク移転を断定しない。

3. Segment Assessment

BDO の事業セグメントは、商業銀行を圧倒的な中核としつつ、保険、プライベートバンキング、投資銀行、リース・ファイナンスなどが周辺収益を補う構造である。銀行クレジットとして最も重要なのは商業銀行であり、信用リスク、預金、流動性、資本消費の大部分はここから生まれる。一方、保険と信託・投資関連業務は、収益の分散と顧客囲い込みを支えるが、リスク特性は貸出とは異なる。

2026年1Qのセグメント別データは次の通りである。SEC 17-Qのセグメント表は、内部取引や消去前の数字を含むため、純利益合計と最終連結純利益には差がある。

2026年1Q セグメント Total net revenues Segment net income Segment assets 信用上の焦点
Commercial Banking PHP73.5bn PHP20.6bn PHP5.59tn 預金、貸出、信用コスト、流動性の中心
Investment Banking PHP0.7bn PHP0.4bn PHP10.6bn 資本市場環境、手数料、起債・M&A
Private Banking PHP0.9bn PHP0.1bn PHP39.5bn 富裕層預かり資産と手数料
Leasing and Financing PHP0.3bn PHP0.03bn PHP21.6bn 車両・設備・中小企業関連リスク
Insurance PHP8.9bn PHP1.8bn PHP138.3bn 収益分散、資産運用、市場変動
Others PHP0.2bn PHP0.1bn PHP3.0bn 補助的

商業銀行は、BDO の信用をほぼ決める部門である。2026年1Qの商業銀行セグメントは、総ネット収益PHP73.5bn、セグメント純利益PHP20.6bn、セグメント資産PHP5.59tnであり、グループ全体の規模と利益の大部分を占める。貸出成長、預金獲得、NIM、信用コスト、営業費用、規制資本はこの部門で発生する。商業銀行の収益が厚いからこそ、BDO は予防的引当を増やしても純利益を維持できる。ただし、法人、個人、中小企業、地方、商業不動産など、信用サイクルが異なる複数のブックを抱えるため、見出しNPLだけでは十分ではない。

保険、投資銀行、プライベートバンキングは、収益分散と顧客関係の厚みを与える。2026年1Qの保険セグメント純利益はPHP1.75bnで、非金利収益の支えとして意味がある。一方、投資銀行とプライベートバンキングの利益規模は商業銀行より小さく、資産リスクの中心ではない。これらは銀行信用の中核支柱というより、顧客接点、手数料、クロスセルの補助線として扱う。

リース・ファイナンスとBDO Network Bank の地方展開は、成長機会と信用リスクが並存する。BDO は2025年に企業向け貸出11%増、中堅市場向け14%増、消費者向け18%増、BDO Network Bank ローンポートフォリオ20%増を示している。成長が広範であることはフランチャイズの強さを示すが、信用コストは通常、成長の後から遅れて表れる。したがって、非金利収益の成長を前向きに見つつも、貸出成長の中身と引当の持続性を分析の中心に置く。

4. Financial Profile and Analysis

BDO の財務プロファイルは、国内最大行としての強い収益力と、成長に伴う資本・引当消費を同時に示している。2025年通期の業績は良好で、純利益は過去最高水準のPHP87.2bn、純金利収入はPHP203.1bn、非金利収入はPHP84.6bn、税引前・引当前利益はPHP122.6bnだった。NPL比率は1.68%へ低下し、CET1比率は13.8%、LCRは121.2%、NSFRは118.2%で、規制水準を上回っている。これだけを見ると、防御力は高い。

一方で、方向性には注意がいる。ROCE は2024年の15.1%から2025年14.4%、2026年1Q12.8%へ低下している。NIMは2024年4.4%から2025年4.3%へ低下し、LCRは132.1%から121.2%へ低下した。NPLカバレッジは145.0%から133.1%へ下がり、CET1比率も14.1%から13.8%、さらに2026年1Qには13.3%となった。これらは危険水準ではないが、貸出と資産が速く伸びる中で安全余裕が少しずつ使われていることを示す。

2025年通期の主要指標を整理すると、BDO は利益創出力が強く、かつ貸出・預金が同時に伸びている。これは銀行にとって望ましい形である。ただし、営業費用は13%増と収益成長9%を上回り、コスト・インカム比率は57.4%へ上昇した。支店網、デジタル投資、コンプライアンス、人員増は長期フランチャイズには必要だが、収益効率を圧迫する。引当前利益は4%増にとどまり、引当が大きく増える局面では、最終利益の伸びは抑えられやすい。

PHP bn unless stated 2024 2025 変化 信用上の意味
Resources 4,876.1 5,431.6 +11% 国内最大行として規模拡大
Gross customer loans 3,225.2 3,654.7 +13% 広範な貸出成長。信用コストの後追いに注意
Deposits 3,794.0 4,189.8 +10% 預金基盤が貸出成長を支える
Equity 577.4 644.1 +12% 内部留保と利益で資本増
Net interest income 186.6 203.1 +9% 貸出増で増収
Non-interest income 77.7 84.6 +9% 手数料・保険等が支える
Pre-provision profit 117.7 122.6 +4% 費用増で伸びは限定的
Allowance for credit losses 14.0 15.0 +7% 引当は増加
Net profit 82.0 87.2 +6% 利益創出力は強い
ROA 1.8% 1.7% -0.1ppt なお良好だが低下
NIM 4.4% 4.3% -0.1ppt 金利低下局面での圧縮を監視
NPL ratio 1.83% 1.68% 改善 見出し資産健全性は良い
NPL cover 145.0% 133.1% 低下 引当余裕はなお厚いが方向性に注意
CET1 ratio 14.1% 13.8% 低下 成長で資本余力を使う
LCR 132.1% 121.2% 低下 規制水準超だがバッファー低下
NSFR 122.1% 118.2% 低下 構造流動性は良いが同様に低下

2026年1Qの財務は、2025年の延長線上にある。SEC 17-Qでは、2026年3月末の総資源はPHP5.71tn、貸出・その他債権ネットはPHP3.79tn、預金はPHP4.43tnで、2025年末からさらに増えている。純金利収入は前年同期比でPHP47.8bnからPHP53.0bnへ増えた。その他営業収入と保険業務収益も増え、税引前利益はPHP25.3bn、SEC 17-Q上の連結純利益はPHP20.2bnである。会社リリースのPHP20.1bnは親会社帰属利益の丸め値として扱う。

ただし、2026年1Qの最も重要な数字は、金融資産減損が前年同期PHP2.86bnからPHP6.07bnへ増えたことである。会社はこれを、地政学リスクを踏まえた予防的な準備金積み増しと説明しているが、本稿では現時点でこの説明を仮説として扱う。純金利収入がPHP53.0bnへ11%増え、商業銀行セグメントの収益も厚いからこそ、BDO は引当増を吸収してPHP20.1bnからPHP20.2bn規模の利益を維持できた。一方で、貸出成長が速い中で、実際の延滞や要注意債権が後から増えるなら、現在のNPL比率1.68%とNPLカバレッジ132%は遅行指標になりうる。CET1比率も2026年1Qに13.3%へ下がっているため、引当増が一過性の保守対応なのか、信用コスト上昇の初期サインなのかを数四半期で見極める必要がある。したがって、2026年以降は、NPL比率だけでなく、早期延滞、リストラクチャリング、セクター別貸出、不動産関連、消費者ローン、クレジットカード、地方・中小企業向けの信用コストを追う必要がある。

資産の質は、現時点では良好に見える。NPL比率は2025年末1.68%、2026年1Qも1.68%であり、BDO の規模と貸出成長を考えると低い。NPLカバレッジも2025年末133%、2026年1Q132%で厚い。ただし、カバレッジ低下とCET1低下が同時に起きている点は、銀行が安全余裕を使いながら成長していることを示す。貸出が二桁成長しているときは、分母効果でNPL比率が見かけ上安定しやすい。延滞や問題債権の絶対額、引当の質、リストラクチャリング債権を合わせて見る必要がある。

資本は、現行格付水準を支えるには十分だが、余裕が無制限に厚いわけではない。2025年末CET1比率13.8%、総自己資本比率14.9%は、BSPの最低水準を上回る。2025年9月末のBDO業界資料では、連結CET1は14.43%、総自己資本比率は15.55%で、規制最低に対しそれぞれ3.93ポイント、5.55ポイントのバッファーがあると示されていた。2025年末、2026年1Qにかけて比率が下がっているため、今後は貸出成長、RWA成長、配当、引当、FVOCI評価損益、保険子会社の資本負担を合わせて見る必要がある。2026年1QにはFVOCI債券評価損が包括利益を圧迫しており、金利・市場価格変動が自己資本の見え方に影響しうる。ただし、CET1低下の内訳としてRWA成長、配当、FVOCI、引当のどれがどの程度効いたかは、本稿時点では十分に分解していない。

財務面の評価は、現時点では信用力を支える要素が明確である。収益性はアジア銀行として良好で、預金と貸出は同時に伸び、NPL比率は低く、2025年末の資本と流動性は規制水準を上回る。2026年1QについてはCET1の低下と預金・貸出の伸びは確認できるが、LCR/NSFRは本稿時点で未確認である。しかし、成長の速さ、引当増、ROCE低下、CET1低下、2025年末までのLCR/NSFR低下を軽視すべきではない。BDO は強い銀行だが、強さは「問題が起きない」ことではなく、問題が出ても利益、預金、資本で吸収できることにある。

5. Structural Considerations for Bondholders

BDO の債券保有者は、基本的には BDO Unibank, Inc. の発行体信用を取る。株式はフィリピン証券取引所上場で、2026年3月末の発行済み普通株式は5.33bn株、優先株式は618mn株である。株主構成では、SM Investments Corporation が普通・優先株の38.87%、Sybase Equity Investments Corporation が12.76%、Multi-Realty Development Corporation が5.93%を保有している。これはBDOがSM Group 系の民間銀行であることを示すが、債券に明示的な親会社保証があることを意味しない。

債券保有者にとっての第一の構造論点は、銀行債務の順位である。BDO の外貨・ペソ建てシニア債は、通常、銀行の無担保シニア債務として、預金や他の銀行債務との法的優先順位、現地破綻処理制度、準拠法、発行支店、税制条項、早期償還条項に左右される。今回の発行体サマリーでは、すべての個別募集書類をレビューしていないため、個別債券投資では該当する Offering Circular、pricing supplement、trust deed、準拠法、negative pledge、cross default、税制グロスアップ、branch issuance、regulatory bail-in または類似条項を確認する必要がある。

第二の論点は、銀行債権者と株主・親グループの関係である。BDO はSM Groupとの関係を持つが、銀行としての資本と流動性はBDO自身の財務で評価すべきである。親グループが広い事業基盤を持つことは、ブランド、顧客接点、預金、法人取引の面でプラスになりうる。しかし、債券保有者にとっては、親グループからの明示保証がない限り、親会社支援を主要な返済原資として扱うべきではない。逆に、関連当事者向け与信や不動産サイクルとの関連が大きい場合は、透明性と集中リスクを割り引く必要がある。

第三の論点は、政府支援と明示保証の違いである。Fitch は2026年4月のrating actionで、BDO の Long-Term IDRをBBB-、Outlook Stableとし、Viability Rating と Government Support Rating をいずれも bbb- とした。Fitch は、BDO の高いシステム上の重要性から必要時の特別な政府支援を期待する一方、IDRはVR主導であるとも説明している。これは、BDO の発行体信用には国内システム上の重要性が効くが、個別債券が政府保証債になるわけではない、という意味である。フィリピンソブリンの信用力やアウトルックが悪化すれば、BDO の支援可能性や外貨建て債務の評価にも影響しうる。

第四の論点は、外貨シニア債とペソ債の違いである。BDO はUSD5.0bn MTN Programを持ち、2025年にはUSD500mnの5年固定利付シニア債を発行した。Capital & Fundingページでは、この債券は2030年12月満期とされる。これは国際資本市場アクセスを示す一方、外貨債保有者はフィリピンソブリン、外貨流動性、発行支店、準拠法、国際投資家のリスク選好にもさらされる。ペソ債は国内預金・流動性とより近いが、国内金利・規制・投資家基盤に依存する。

構造面の結論として、BDO のシニア債保有者は、国内最大級銀行の発行体信用と預金主導の流動性に支えられる。一方、親グループ保証、政府保証、個別債券条項の詳細を確認せずに安全性を上乗せしてはいけない。個別証券投資では、発行体、発行支店、順位、準拠法、フィリピンの銀行破綻処理制度、外貨・ペソの調達環境を分けて見る必要がある。

6. Capital Structure, Liquidity and Funding

BDO の資金調達は預金主導であり、ここが発行体信用の最重要支柱である。2025年末の預金はPHP4.19tn、2026年3月末の預金はPHP4.43tnであり、貸出・その他債権ネットを十分に上回る。預金の中身を見ると、2026年3月末では要求払預金PHP651bn、貯蓄預金PHP2.26tn、定期預金PHP1.52tnである。2025年通期にはCASA比率が68%と開示されており、低コスト・粘着性の高い預金基盤がNIMと流動性を支える。

2025年末の貸出/預金比率は87.2%である。これは、貸出成長が預金成長をやや上回ったことを示すが、まだ過度な水準ではない。2026年3月末の粗い計算でも、貸出・その他債権ネットPHP3.79tnに対し預金PHP4.43tnであり、預金で貸出を十分に支えられる。問題は、水準より方向である。2025年の貸出13%増、2026年1Qの貸出16%増に対し、預金も2025年10%増、2026年1Q15%増と伸びている。預金成長が貸出成長についていける限り、資金調達リスクは抑えられる。もし貸出成長が先行し、預金成長が鈍れば、市場性調達への依存と流動性バッファーの低下が信用制約になる。

流動性指標は2025年末時点では規制水準を上回るが、バッファー低下を監視する必要がある。2025年末の連結LCRは121.2%、NSFRは118.2%であり、規制最低100%を上回る。2024年末はLCR132.1%、NSFR122.1%だったため、低下方向ではある。2026年1Qについては、預金PHP4.43tnと貸出・その他債権ネットPHP3.79tnから見て資金調達構造に大きな悪化は見えないが、同四半期のLCR/NSFRは本稿時点で確認できていない。BDO のように大きな預金基盤を持つ銀行では、LCR/NSFRが100%を少し上回るだけでも直ちに問題とは言えないが、急速な貸出成長、市場性調達増加、外貨債発行、金利変動による有価証券評価損が重なると、流動性余力の見え方は変わる。

市場性調達は、預金の補完であり、信用力のストレステストでもある。BDO のCapital & Fundingページは、USD5.0bn MTN Program、PHP500bn Peso Bond Program、2025年のUSD500mn 5年固定利付債、2025年のPHP115bn ASEAN Sustainability Bond、2026年のPHP100bn ASEAN Sustainability Bondを示している。国際ドル債市場にアクセスできることは、外貨調達の多様化と投資家認知の面でプラスである。ただし、外貨債は国内預金とは違い、国際金利、ドル流動性、投資家の新興国リスク選好、フィリピンソブリンの外貨格付に左右される。BDOの基本的な強みは市場性調達ではなく預金にあり、外貨債は資金調達期間と通貨多様化の補助と見るべきである。

主な資本市場調達枠と近年の起債は次の通りである。

金額 商品・枠 満期・条件 本稿で確認できること 未確認事項
継続 USD5.0bn Medium-Term Note Program 複数通貨・複数トランシェの外貨調達枠 国際資本市場アクセスの基盤 個別シリーズの全OC、支店、準拠法、bail-in類似条項
継続 PHP500bn Peso Bond Program 国内ペソ債発行枠 国内市場アクセスの基盤 個別シリーズの発行条件、担保・順位、早期償還
2025 USD500mn 5年固定利付シニア債 2030年12月満期、報道ベースでクーポン4.375% 外貨シニア市場へのアクセス Offering Circular、発行支店、準拠法、税制条項、破綻処理上の扱い
2025 PHP115bn ASEAN Sustainability Bond 2027年1月満期 国内長期資金とESG資金使途 個別条項、グリーン/サステナビリティ資金充当の詳細
2026 PHP100bn ASEAN Sustainability Bond 3年債 大型ペソ調達の継続 個別条項、投資家構成、再調達コスト

資本は、現時点では十分だが、成長とのバランスが重要である。2025年末CET1比率13.8%、Tier 1比率13.9%、総自己資本比率14.9%、Basel III leverage ratio 10.2%である。2026年1Qの会社リリースではCET1比率13.3%とされる。銀行としての最低規制水準に対して余裕はあるが、Fitch がVRアップグレード要因の一つとしてCET1比率16%超の持続を挙げていることを踏まえると、BDO の現在の資本水準は「強すぎる」水準ではなく、「成長を続ける国内最大行として十分だが、改善余地はある」水準と見るのが自然である。

配当と成長のバランスも見る必要がある。2025年の普通株キャッシュ配当は1株あたりPHP4.30、配当性向は27.9%だった。利益の大部分は内部留保として残り、貸出成長と資本積み増しを支える構造である。もし配当性向が大きく上がる、または大規模な株主還元が行われる場合、貸出成長と引当増を同時に吸収する余力が低下する。現時点では配当は過度ではないが、銀行の成長ペースを考えると、内部資本生成を維持することが重要である。

資金調達・流動性の評価をまとめると、BDO は預金主導で資金調達する国内最大行であり、2025年末のLCR/NSFRも規制水準を上回る。2026年1Qについては、預金と貸出/預金比率から見て大きな流動性悪化は見えないが、LCR/NSFRは未確認である。外貨・ペソ債市場へのアクセスもあり、短期的な流動性懸念は小さい。一方で、貸出成長が速く、資本比率と2025年末までの流動性比率が低下方向であるため、今後は預金成長、貸出/預金比率、LCR、NSFR、市場性調達比率、CET1、信用コストを一体で見る必要がある。

7. Rating Agency View

BDO の格付は、投資適格下位のフィリピン銀行としての位置づけを示している。2026年4月、Fitch はBDO の Long-Term Foreign- and Local-Currency IDRをBBB-、Outlook Stableで確認し、Viability Rating と Government Support Rating をいずれも bbb- とした。Fitch は、BDO のIDRがVR主導であり、VRは国内市場をリードするフランチャイズ、強い国内資金調達基盤、事業成長、一貫した収益性、景気循環を通じた安定した財務パフォーマンスを反映すると説明している。一方で、フィリピンソブリンのアウトルックが2026年4月20日にStableからNegativeへ変更されたことも、近い将来のマクロヘッドウィンドとして触れている。

Fitch の見方で重要なのは、政府支援が「明示保証」ではなく「システム上の重要性に基づく支援可能性」として扱われている点である。Fitch は、BDO が同国最大行として高いシステム上の重要性を持つため、必要時には特別な政府支援が期待されるとする一方、政府の支援能力はソブリン見通しに左右される。今回確認したFitch情報では、VRとGSRはいずれもbbb-で同水準であり、IDRはVR主導と説明されている。したがって、BDO の格付を読む際には、銀行単体のVR、政府支援可能性、フィリピンソブリンの信用力を分ける必要がある。GSRを追加的な政府保証や回収原資として読むべきではない。

Fitch はアップグレード要因として、インペアードローン比率が持続的に1.5%未満であること、OP/RWAが3.5%前後を維持すること、CET1比率が16%超で持続することを挙げている。これは、現在のBDOが良好な銀行であっても、格付上はさらに強い資産健全性、収益性、資本余力が必要だという意味である。BDO の2025年末NPL比率は1.68%、CET1比率は13.8%、2026年1QのCET1は13.3%であり、Fitchが示すアップグレード目線とは距離がある。

Moody's は2025年5月、BDO、BPI、Metrobankの長短期預金格付をBaa2/P-2、アウトルックStableで確認したと報じられている。報道によれば、Moody's はBDO のBaa2シニア無担保格付、(P)Baa2 MTNプログラム格付、baa2 BCAおよび adjusted BCAを確認し、安定した資産の質、強い信用審査、堅固な資金調達・流動性、良好な収益性、十分な資本を評価した。Moody's は、BDO の市場性資金への依存が有形銀行資産の6%にとどまり、2024年末LCRが132%であることも強みと見ている。今回のレポートでは、Moody's の一次リリース全文は確認できていないため、Moody's の詳細表現は二次ソースとして扱う。

S&P の最新発行体格付は、本稿作成時点で一次ソースを確認できていない。したがって、S&P格付は本文の信用判断の根拠には置かない。個別投資判断では、Moody's、Fitchに加え、S&P格付の有無、格付対象、発行体、支店、債券順位を確認する必要がある。

格付会社の見方を総合すると、BDO は国内最大級のフランチャイズ、預金、収益性、資産の質を評価される投資適格銀行である。一方で、フィリピンソブリンとの連動、CET1が格上げ目線には届かないこと、NPL比率が1.5%未満で安定しているわけではないこと、貸出成長が速いことは制約である。格付は信用判断の代替ではないが、BDO が「強い国内銀行である一方、ソブリン制約と資本余力の上限を持つ」という本稿の枠組みと整合している。

8. Credit Positioning

BDO を同業と比較する場合、フィリピン国内銀行の中では最上位フランチャイズに置くのが自然である。総資産、貸出、預金、AUM、資本、支店網で首位級であり、BPI、Metrobank、Land Bank と比べても規模の優位が大きい。これは預金獲得、企業・個人顧客の接点、資本市場アクセス、手数料収入、信用サイクルへの耐性の面で支えになる。

ただし、国際投資家が外貨シニア債として見る場合、BDO はグローバル大手銀行やシンガポール3行とは異なる。OCBC、DBS、UOBのようなシンガポール銀行は、より高いソブリン格付、国際金融センターとしての制度、資本市場アクセス、外貨流動性を持つ。一方、BDO はフィリピン経済とソブリンの信用力により強く結びつく。したがって、BDO の外貨シニア債は、フィリピン最大行の強い国内フランチャイズを取る一方、フィリピンソブリンと新興国銀行リスクを受け入れる商品と見るべきである。

同じフィリピン銀行内では、BDO は規模、預金、収益分散で強い。Moody'sの報道では、BDO、BPI、MetrobankはいずれもBaa2/P-2の預金格付で確認されており、格付上は同国大手民間銀行がソブリンと近い水準で並ぶ。差別化は、個別銀行の資産成長、消費者ローン比率、資本余力、市場性調達依存、流動性、収益性に出る。BDO は最大の預金と貸出を持つ一方、貸出成長が速く、CET1比率は2026年1Qに13.3%まで下がっているため、資本余力だけで同業に対して明確に上位とは言い切れない。

シニア債の信用ポジショニングとしては、BDO は低位投資適格のフィリピン銀行シニア信用である。投資家が要求すべきプレミアムは、シンガポールや韓国上位銀行よりは高く、同国または同格付帯の新興国銀行と比べて、預金フランチャイズと規模の強さをどう評価するかで決まる。本稿ではライブのスプレッド、利回り、CDS、同年限比較を確認していないため、具体的な相対価値判断は行わない。

重要なのは、BDO を「ソブリン同等の安全資産」とも、「新興国民間銀行だから脆い」とも単純化しないことである。国内最大の預金銀行として支払能力と流動性は強い。一方で、外貨債投資では、フィリピンソブリン、銀行規制、外貨流動性、国際投資家のリスク選好、個別債券条項が効く。信用面の比較では、預金基盤、NPL、CET1、LCR/NSFR、貸出成長、引当、格付会社の支援前提をそろえて見る必要がある。

9. Key Credit Strengths and Constraints

BDO の信用力は、強みがはっきりしている。第一の強みは、フィリピン最大の預金・貸出フランチャイズである。総資産、貸出、預金、AUM、資本、支店網の各面で首位級であり、国内銀行システムの中核にいる。これにより、預金調達、顧客分散、手数料収入、資本市場アクセス、規制当局からの重要性が支えられる。

第二の強みは、収益性である。2025年の純利益はPHP87.2bn、ROAは1.7%、ROCEは14.4%であり、銀行として十分な内部資本生成力を持つ。2026年1Qも、引当を大きく増やしたにもかかわらず、純利益はPHP20.1bnを維持した。利益が厚い銀行は、信用コストが増えても資本に直接跳ね返る前に吸収できる余地がある。

第三の強みは、資産健全性の見出し指標である。2025年末と2026年1QのNPL比率は1.68%であり、NPLカバレッジも130%台を維持している。貸出が二桁成長している中でNPL比率が上がっていないことは、現時点では与信管理が大きく崩れていないことを示す。

第四の強みは、預金主導の流動性である。2025年末のLCRは121.2%、NSFRは118.2%で規制水準を上回る。2026年3月末の預金はPHP4.43tnで、貸出・その他債権ネットPHP3.79tnを上回る。外貨・ペソ債の市場アクセスも確認できるが、信用力の中核は市場調達ではなく預金である。

一方、制約も明確である。第一の制約は、貸出成長の速さである。2025年の総顧客貸出13%増、2026年1Q16%増は、短期的には収益を押し上げるが、信用コストは遅れて表れる。NPL比率が安定していても、新規貸出のヴィンテージが成熟したときに延滞が増える可能性はある。特に消費者ローン、クレジットカード、中小企業、地方・未充足市場向けの拡大は、景気悪化時の信用コスト感応度が高い。

第二の制約は、資本・流動性バッファーが低下方向にあることである。CET1比率は2024年末14.1%、2025年末13.8%、2026年1Q13.3%へ低下した。LCRも2024年末132.1%から2025年末121.2%へ低下した。いずれも規制水準を上回るが、成長が速い局面では方向性が重要である。

第三の制約は、フィリピンソブリンとの連動である。BDO は政府系銀行ではないが、最大級の国内銀行として、同国のマクロ、外貨流動性、規制、ソブリン格付、政府支援能力に強く影響される。Fitch がフィリピンソブリンのアウトルック悪化をBDOの近いマクロ環境の文脈で触れている点は無視できない。

第四の制約は、情報の粒度である。本稿で確認した公開資料だけでは、セクター別・担保別・不動産関連・関連当事者向け・個別大口先エクスポージャーを十分に分解できていない。国内最大行であるほど大口企業、商業不動産、コングロマリット、インフラ、消費者ローンへの幅広いエクスポージャーを持つ。見出しNPLが良好でも、どのブックが成長しているかを確認しないと、次の信用コスト源を見誤る。

強みと制約を総合すると、BDO は発行体信用としては投資適格の耐久力を持つが、成長局面の銀行として慎重に見るべきである。預金と収益力は強い。問題は、どの程度の貸出成長を、どれだけの資本・流動性・引当で支え続けられるかである。

10. Downside Scenarios and Monitoring Triggers

BDO の主なダウンサイドは、急な預金流出よりも、貸出成長の後から信用コストが上がり、資本と収益性を同時に圧迫するシナリオにある。国内最大の預金フランチャイズを持つため、通常時の資金繰り不安は低い。しかし、2025年から2026年1Qにかけて貸出は速く伸び、CET1は低下し、引当は増えている。この組み合わせは、現時点の信用力を否定するものではないが、監視すべき方向性を示す。

第一のダウンサイドは、消費者・中小企業向けの信用コスト上昇である。BDO は2025年に消費者ローンを18%、BDO Network Bank のローンポートフォリオを20%増やした。地方・未充足市場への拡大は顧客基盤を広げる一方、所得ショック、金利、災害、雇用悪化に影響されやすい。早期延滞が増えれば、見出しNPLより先に信用コストが上がる。

第二のダウンサイドは、法人・不動産関連エクスポージャーの悪化である。BDO は国内最大行として、大企業、インフラ、不動産、商業施設、国内コングロマリットに広く接点を持つ可能性がある。本稿では個別大口先や不動産関連の詳細残高を確認できていないため、関連当事者向け、担保評価、プロジェクトファイナンス、大口先集中は個別投資前に確認すべきである。

第三のダウンサイドは、NIM低下と費用増による引当前利益の鈍化である。2025年は純金利収入が伸びたが、NIMは4.4%から4.3%へ下がり、営業費用は13%増え、引当前利益の伸びは4%にとどまった。信用コストが増える局面で引当前利益の成長が弱いと、最終利益と資本生成が同時に圧迫される。

第四のダウンサイドは、資本比率の低下である。CET1は2026年1Qに13.3%であり、規制水準を上回るが、貸出成長、RWA増、引当、FVOCI評価損、配当、保険子会社の資本負担が重なると低下しうる。Fitchがアップグレード要因としてCET1 16%超を挙げている点を踏まえると、BDOの資本余力は格付上の大きな上方余地というより、現行格付維持の土台である。CET1が12%近辺へ近づく、または総自己資本比率が大きく低下する場合は、信用見方を見直す必要がある。

第五のダウンサイドは、フィリピンソブリンと外貨調達環境の悪化である。BDO は国内預金で強いが、外貨シニア債投資家はソブリンリスクも取る。フィリピンの格付見通し悪化、通貨安、国際市場の新興国リスク回避、米ドル金利上昇が重なれば、外貨債スプレッドと再調達コストは上がりやすい。

主なモニタリング項目は次の通りである。

Monitoring trigger 見るべき数字・事象 悪化シグナル 改善シグナル
貸出成長 総顧客貸出、部門別貸出 二桁成長継続と質の不透明化 成長鈍化と質の開示改善
消費者・中小企業 早期延滞、NPL、信用コスト カード、個人、中小企業の延滞増 早期延滞安定、引当ピークアウト
法人・不動産 大口先、不動産、関連当事者 大口再編、担保価値低下 透明性向上、問題先なし
引当 金融資産減損、NPLカバレッジ 引当が利益を継続圧迫 予防的引当後に信用コスト安定
資本 CET1、総自己資本比率、RWA CET1低下、RWA急増 内部資本生成で比率維持
流動性 預金、貸出/預金比率、LCR、NSFR 預金伸び鈍化、市場性調達依存 預金成長とLCR/NSFR維持
格付 Fitch、Moody's、ソブリン ソブリン見通し悪化、銀行outlook悪化 Stable維持、資本・資産指標改善
外貨債 満期、再調達、MTN発行条件 新発プレミアム拡大、需要低下 長期外貨資金を安定調達

アップサイド条件も明確である。NPL比率が1.5%未満へ低下し、信用コストが落ち着き、CET1が再び14%台から15%台へ回復し、LCR/NSFRが高位で安定し、貸出成長が預金と資本に見合う範囲に収まれば、BDO の信用評価はより強くなる。反対に、貸出成長の後から信用コストが増え、CET1と流動性が低下し、ソブリン見通しも悪化する場合は、最大行の強みがあっても外貨シニア債のリスクプレミアムは広がりやすい。

11. Credit View and Monitoring Focus

現時点のBDOの信用力水準は、フィリピン最大の預金・貸出フランチャイズ、良好な収益性、低いNPL比率、2025年末時点で規制水準を上回る資本・流動性に支えられる、投資適格の銀行発行体信用と評価できる。信用力の方向性は、短期的には安定寄りだが、急速な貸出成長、2026年1Qの引当増、CET1低下、2025年末までのLCR/NSFR低下を踏まえると、明確な改善方向とはまだ言えない。2026年1QのLCR/NSFRは未確認であるため、同四半期の流動性評価は預金成長と貸出/預金比率からの暫定判断にとどめる。急速な信用力悪化の蓋然性は、預金基盤、収益力、NPLカバレッジを考えれば現時点では高くないが、信用コスト、資本、ソブリン見通しが同時に悪化する場合は見方を見直す必要がある。

この信用見方を支えるのは、BDO の国内銀行システムにおける圧倒的な存在感である。BSP統計で総資産とネット貸出の首位であり、自社開示でも預金、貸出、AUM、資本、支店網の各面で最大とされる。銀行信用では、預金の安定性が最も重要である。BDO は2026年3月末にPHP4.43tnの預金を持ち、貸出・その他債権ネットPHP3.79tnを支えている。国内預金フランチャイズが強いため、市場調達環境が悪化しても、直ちに資金繰りが詰まる銀行ではない。

一方、BDO を無条件に強い銀行として扱うのは危うい。2025年から2026年1Qの貸出成長は速く、CET1比率は13.8%から13.3%へ低下し、2025年末のLCR/NSFRも前年末から下がった。NPL比率は1.68%で安定しているが、貸出成長局面ではNPL比率が遅行しやすい。2026年1Qの引当増は予防的と説明されているものの、投資家は、これが慎重な前倒し引当なのか、信用コスト上昇の初期サインなのかを次の数四半期で確認すべきである。

証券クラス別には、シニア債の出発点はBDOの発行体信用である。国内最大行の預金、収益力、資本、流動性が主な支えになる。ただし、個別証券の評価は発行体信用だけでは完結しない。外貨シニア債では、フィリピンソブリン、外貨流動性、国際投資家のリスク選好、発行支店、準拠法、個別条項、破綻処理上の扱いを確認する必要がある。親グループや政府の明示保証を前提にしてはいけない。SM Groupとの関係はフランチャイズ上のプラスになりうるが、定量化できておらず、債券保有者の法的回収原資ではない。政府支援可能性も、システム上の重要性を反映する格付上の考慮であり、政府保証債ではない。

本稿の中心的なモニタリング焦点は三つである。第一に、貸出成長と信用コストの関係である。2026年1QのNPL比率が安定していても、消費者ローン、中小企業、地方、法人、不動産関連の早期延滞や要注意債権を確認する必要がある。第二に、資本と流動性の方向性である。CET1、総自己資本比率、RWA、配当、LCR、NSFR、貸出/預金比率を一体で見る。第三に、ソブリンと外貨調達である。Fitchのソブリン見通し悪化は、BDOのシニア信用そのものを直ちに損なうものではないが、外貨債投資家の要求プレミアムには影響する。

信用見方が改善する条件は、貸出成長の質が確認され、NPL比率がさらに低下し、引当がピークアウトし、CET1が再び上昇方向に転じ、LCR/NSFRが維持されることである。Fitchが示すように、NPL比率が1.5%未満で持続し、収益性が強まり、CET1が16%に近づくなら、BDO の信用余地は広がる。反対に、2026年1Qの引当増が一過性でなく、信用コストが継続的に上がり、CET1がさらに低下し、預金成長が鈍り、ソブリン見通しが悪化する場合は、現行の安定的な見方は弱まる。

現時点の実務的な結論は、BDO のシニア発行体信用は、フィリピン銀行の中では最上位級のフランチャイズに支えられ、信用面では検討対象に入る低位投資適格銀行である、というものである。ただし、具体的な証券投資判断には、ライブスプレッド、相対価値、発行支店、準拠法、個別債券条項、破綻処理上の扱いを確認する必要がある。信用面では回避すべき弱い銀行ではない。しかし、最大行であることをもってソブリンや信用サイクルから独立しているわけでもない。投資家は、預金基盤と収益力を評価しつつ、成長の質、引当、CET1、流動性、ソブリン連動を継続的に確認すべきである。

12. Short Summary & Conclusion

BDO Unibank は、フィリピン最大の預金・貸出フランチャイズを持つ民間ユニバーサルバンクであり、強い預金基盤、収益力、低いNPL比率が発行体信用を支えている。一方で、2025年から2026年1Qにかけて貸出成長が速く、引当増、CET1低下、2025年末までの流動性比率低下が見られるため、改善局面と断定するには早い。2026年1QのLCR/NSFRは未確認であり、同四半期の流動性評価は預金成長と貸出/預金比率からの暫定判断にとどまる。シニア信用は投資適格銀行として分析対象に入るが、外貨債投資ではフィリピンソブリン、個別債券条項、発行支店、破綻処理上の扱い、貸出成長の質、資本・流動性バッファーを継続確認する必要がある。

13. Sources

Company and primary sources

Rating and market sources

Internal working materials referenced

Unverified or pending items