Issuer Credit Research

Issuer Summary: KEB Hana Bank

Issuer: Keb Hana Bank | Document: Issuer Summary | Date: 2026-05-15

Report date: 2026-05-15
Issuer: KEB Hana Bank / Hana Bank
Sector: South Korea banking
Primary credit focus: operating-bank senior credit, funding and liquidity, asset quality, regulatory capital, and security-class differentiation

Business Snapshot and Recent Developments

KEB Hana Bank、現在の開示上は主に Hana Bank と表記される銀行は、Hana Financial Group の中核オペレーティング銀行であり、韓国国内の預金、貸出、決済、外国為替、貿易金融、個人金融、法人金融、資産管理関連サービスを広く担う大手商業銀行である。発行体として見るべき対象は、金融持株会社である Hana Financial Group そのものではなく、預金と貸出の実体を持つ銀行本体である。グループには証券、カード、キャピタル、生命保険、資産信託、貯蓄銀行などの非銀行子会社があるが、Hana Bank のシニア信用を評価する際の出発点は、銀行単体の資産の質、資本、預金基盤、流動性、収益力である。

このレポートでは、原則として Hana Financial Group の 2026年第1四半期 IR Databook に掲載された Hana Bank シートの銀行単体連結データを使う。グループ全体の説明や株主還元方針に触れる箇所だけ、Hana Financial Group 連結データを補助的に使う。これは重要である。Hana Financial Group 連結では、Hana Securities、Hana Card、Hana Capital などの非銀行子会社の利益、資産の質、資本消費が含まれる。一方、Hana Bank 発行債の基礎的な返済力は、銀行本体の貸出、預金、資本、資産の質、調達に依拠する。同じ Hana 名義でも、銀行本体、持株会社、下位資本商品、海外子会社関連エクスポージャーは同一のリスクではない。

2026年3月末の Hana Bank の総資産は約KRW 564.4tn、貸出債権は約KRW 386.1tn、預金は約KRW 396.2tnである。銀行単体の純利益は2025年通期で約KRW 3.75tn、2026年第1四半期で約KRW 1.10tnだった。普通株等Tier 1比率は2025年末16.42%、2026年3月末16.24%で、BIS比率は同じ期間に17.62%から17.32%へ小幅に低下した。これらの数字は、Hana Bank が韓国銀行セクター内でも十分に大きく、資本の厚い銀行であることを示す。

直近の変化で最も重要なのは、2026年第1四半期に銀行単体の収益が強かった一方、資産の質指標には小幅な悪化が見えることである。Hana Bank の2026年第1四半期純利益は約KRW 1.10tnで、前年同期比11.2%増加した。純金利収益は約KRW 2.18tn、NIMは1.58%で、2025年通期の1.49%から改善した。これは、資金調達コストの低下、低コスト預金の増加、収益性を意識した貸出運営が効いたことを示す。一方、NPL比率は2025年末0.35%から2026年3月末0.37%へ上昇し、延滞率も0.32%から0.39%へ上がった。絶対水準はまだ低いが、韓国の中小企業、SOHO、家計、建設・不動産関連のストレスが銀行の数字に表れ始めている可能性は無視できない。

Hana Bank を「高格付の韓国大手銀行だから安心」とだけ見るのは浅い。同行は確かに高い資本比率、強い預金基盤、HFG の中核性、A格帯以上の国際格付を持つ。一方で、韓国銀行セクターの構造的論点である家計債務、不動産担保、SOHO・SME、外貨流動性、市場性調達、規制資本、グループ株主還元の影響を受ける。したがって、シニア信用のベースケースは強いが、投資家は低いNPL比率だけでなく、延滞率、NPL coverage、信用コスト、CET1、RWA、低コスト預金、外貨資金市場を四半期ごとに確認すべきである。

2025年から2026年第1四半期にかけての主な信用上の変化は次の通りである。数字は特記しない限り Hana Bank 単体連結ベース、金額単位はKRW trillionである。

データ定義には注意が必要である。貸借対照表の「貸出債権」「預金」は銀行全体のバランスシート規模を示すために使い、Loan & Deposit 系列の「KRW loan」「銀行会計ベースの総預金」「低コスト預金」は、ウォン建て貸出構成や預金の質を読むために使う。このため、貸借対照表上の貸出債権が2026年3月末に四半期比で減っている一方、KRW loan は増加している。流動性評価では、貸借対照表の預金規模を基礎調達の大きさとして見つつ、低コスト預金系列を預金の質の補助指標として扱う。

項目 2025年末 / 2025年通期 2026年3月末 / 2026年1Q 信用上の読み方
総資産 557.0 564.4 大型銀行としての規模は拡大。急成長ではなく、成熟した大手銀行のバランスシート管理が焦点。
貸出債権 396.9 386.1 四半期末ベースでは減少。KRW loan は増加しており、表示範囲と外貨・その他項目を分けて読む必要。
預金 404.3 396.2 預金は四半期末で減少したが、銀行規模に対して依然大きい。低コスト預金は増加。
純利益 3.75 1.10 2026年1Qは強い利益水準。信用コスト吸収力を支える。
NIM 1.49% 1.58% 2026年1Qに改善。資金調達コスト低下と低コスト預金増加が支え。
NPL比率 0.35% 0.37% 絶対水準は低いが、方向はやや悪化。
延滞率 0.32% 0.39% NPLより先に動く指標として注意が必要。
NPL coverage 136.3% 123.5% 100%超は維持するが、低下方向。引当姿勢と新規NPLの担保状況を確認したい。
CET1比率 16.42% 16.24% 依然厚い。RWA増加に対する余裕は十分。
BIS比率 17.62% 17.32% 小幅低下したが、銀行シニア信用を支える水準。
国際長期格付 S&P A+、Moody's Aa3、Fitch A 同左 高格付銀行としての市場アクセスを支える。

この表から読み取るべきことは、Hana Bank の信用力が一方向に改善しているわけでも、弱い方向へ転じたわけでもないということである。収益と資本は強い。NIMは改善し、低コスト預金も増えている。一方、NPL、延滞、coverage は慎重に見るべき方向へ動いた。現時点ではシニア信用の安定性を揺るがす水準ではないが、2026年以降の信用見方は、資産の質がこの程度で止まるか、SME・SOHO・不動産関連から広がるかで変わる。

Industry Position and Franchise Strength

Hana Bank は、KB Kookmin Bank、Shinhan Bank、Woori Bank と並ぶ韓国主要商業銀行の一角である。韓国の銀行市場は成熟しており、新規貸出を急拡大することで信用力を高める市場ではない。主要行の強さは、預金、決済、給与口座、住宅ローン、企業取引、外国為替、貿易金融、デジタル接点、資産形成サービスを組み合わせた顧客関係の厚さにある。Hana Bank はこの中で、外為・国際業務に由来するブランド、HFG の総合金融グループとしての顧客接点、韓国内の大手銀行としての預金・貸出規模を持つ。

フランチャイズの第一の支柱は預金基盤である。Hana Bank の2026年3月末預金は、貸借対照表ベースで約KRW 396.2tnであり、銀行単体の貸出債権約KRW 386.1tnをおおむねカバーしている。Loan & Deposit 系列の銀行会計ベースでは、総預金は2025年末約KRW 391.0tn、2026年3月末約KRW 379.4tnであり、低コスト預金は同期間に約KRW 125.2tnから約KRW 133.0tnへ増加した。低コスト預金比率は2025年末32.0%から2026年3月末35.0%へ上がっている。銀行信用にとって、低コスト預金の増加はNIMと預金の質を支える。金利競争で預金コストが上がる局面でも、給与口座、法人決済、生活口座、外為取引、資産管理を組み合わせた預金は、単純な高金利商品より粘着性が高い。

第二の支柱は、リテールと法人をまたぐ貸出基盤である。2026年3月末のKRW loan は約KRW 320.7tnで、そのうち家計向けが約KRW 141.3tn、法人向けが約KRW 179.5tnだった。法人向けの中ではSME向けが約KRW 144.3tn、SOHO向けが約KRW 58.5tnである。これは、Hana Bank が大企業向けだけの銀行でも、住宅ローンだけの銀行でもないことを示す。家計、SME、大企業、SOHO、外為・貿易関連顧客を広く持つことは、収益源と預金源の分散を生む。一方で、韓国の内需、家計債務、中小企業、建設・不動産サイクルへの感応度も持ち込む。

第三の支柱は、Hana Financial Group のグローバル・ネットワークと外為・国際業務の位置づけである。HFG の公式 Global Network ページは、グループが27地域に199拠点を持つと説明している。これは銀行本体の直接の返済原資や流動性ではなく、顧客接点、ブランド、法人取引、外貨・貿易金融の補助材料として扱うべきである。Hana Bank は旧 Korea Exchange Bank との統合の歴史を持ち、韓国大手行の中でも外国為替・クロスボーダー取引のイメージが強い。一方、外貨業務は米ドル資金市場、ウォン安、海外投資家の韓国リスク回避、海外子会社の資産の質がストレス時に調達コストへ波及しうるため、外貨流動性は発行体信用の補助的だが重要な監視項目である。

Hana Bank のフランチャイズは強いが、韓国銀行セクターの中で最も保守的な銀行と断定するには追加比較が必要である。KB Kookmin Bank や Shinhan Bank も同じく大規模な預金・貸出基盤、高い格付、強い資本を持つ。Woori Bank は同じ大手銀行の一角だが、資本、格付、収益性の評価は時点により異なる。Hana Bank はこの上位行グループの中で、総資産、預金、貸出、資本比率、格付のいずれも高位にあるが、今回の作業では韓国銀行別の公式市場シェアを再計算していない。そのため、本文では「韓国主要大手銀行の一角」「上位行」と表現し、厳密な順位は未確認事項に残す。

フランチャイズ評価で誤りやすいのは、グループの非銀行化を銀行シニア信用の直接的な返済力として過大評価することである。HFG 連結では、Hana Securities、Hana Card、Hana Capital などが収益分散に寄与する。2026年第1四半期には Hana Securities、Hana Card、Hana Capital も一定の利益を計上した。これはグループ全体にはプラスである。しかし、銀行本体のシニア債投資家にとって、非銀行収益は直接の担保や返済原資ではなく、グループ資本政策、ブランド、顧客接点を通じた間接要因である。発行体信用を見る際は、まず銀行単体の預金、貸出、資本、資産の質を置き、その上でグループ全体の資本配賦と非銀行リスクを補助的に見るべきである。

このフランチャイズを一言で整理すれば、Hana Bank は「外為・国際業務の色を持つ、預金主導の韓国大手商業銀行」である。信用上の支えは、日常的な顧客取引と厚い預金にある。制約は、韓国の家計・SME・不動産サイクルと、外貨資金市場に対する一定の感応度である。

Segment Assessment

Hana Bank のセグメント評価では、銀行内の貸出ポートフォリオを、家計向け、法人向け、SME、SOHO、大企業、外貨・国際業務に分けて見る必要がある。HFG の Databook は、銀行単体の損益を事業部門別に細かく分けるより、貸出・預金・資産の質を中心に示している。そのため、本稿では「どの部門が利益を生むか」より、「どの資産が信用リスクを生むか」「どの預金が資金調達を支えるか」を中心に整理する。

貸出構成の中心は、家計向けと法人向けの二本柱である。2026年3月末のKRW loan 約KRW 320.7tnのうち、家計向けは約KRW 141.3tn、法人向けは約KRW 179.5tnだった。家計向けの中では担保付き貸出が約KRW 122.9tn、そのうち住宅ローンが約KRW 111.6tnを占める。住宅ローンは担保があるため通常の損失率は抑えられやすいが、韓国の家計債務、住宅価格、DSR規制、雇用環境、金利負担に強く結びつく。家計向けNPL比率は2026年3月末0.27%で、法人向けより低い。ただし、残高が大きいため、家計延滞率が少し動くだけでも市場心理には影響しうる。

法人向け貸出は、収益とリスクの両方で重要である。2026年3月末の法人向けKRW loan は約KRW 179.5tnで、2025年末の約KRW 176.2tnから増加した。このうちSME向けは約KRW 144.3tnであり、法人向けの大半を占める。SMEはHana Bank の顧客基盤を支える一方、内需、金利、建設、不動産、サービス業、地域経済に敏感である。2026年3月末のSME延滞率は0.61%で、2025年末の0.47%から上昇した。SOHO向け延滞率も同期間に0.48%から0.56%へ上がった。数字は危機的ではないが、方向は明らかに注意を要する。

大企業向けは残高としてはSMEより小さいが、個別イベントの影響が大きい。2026年3月末の大企業向けKRW loan は約KRW 31.1tnだった。大企業向け延滞率は0.02%未満であり、現時点では問題の中心ではない。ただし、韓国大手企業や輸出企業は、為替、半導体・化学・鉄鋼・自動車などの業界サイクル、グローバル需要、貿易環境に影響される。大企業向けの信用イベントが起きた場合、件数は少なくても金額が大きく、銀行の引当や市場心理に影響する可能性がある。

業種別に見ると、建設業、不動産・賃貸関連、宿泊・飲食、卸売・小売、科学・技術、その他サービスなどが監視対象になる。HFG Databook の Asset Quality_Bank シートでは、2026年3月末の企業向け建設業延滞率は0.53%、不動産・賃貸関連は0.57%だった。SMEだけを見ると、建設業延滞率は1.44%、不動産・賃貸関連は0.60%だった。確認済み事実は、これらの業種別・SME別延滞率である。韓国銀行セクター全般では不動産プロジェクトファイナンス、地方不動産、建設会社、信託関連プロジェクトが論点になりうるが、今回の資料では Hana Bank の直接PF残高、信託案件、地域別、担保別の詳細残高までは確認していない。

資産の質をセグメント別にまとめると、次の通りである。金額単位はKRW trillion、比率はDatabookベースである。

指標 2025年末 2026年3月末 信用上の読み方
KRW loan 合計 317.9 320.7 緩やかな増加。収益にプラスだが、RWAと資産の質も見る必要。
家計向け KRW loan 141.6 141.3 ほぼ横ばい。住宅ローン中心で、家計債務と住宅価格が焦点。
住宅ローン 111.9 111.6 安定的だが規模が大きい。担保価値・DSR規制・雇用を監視。
法人向け KRW loan 176.2 179.5 増加。SMEと大企業の質を分けて見る必要。
SME向け KRW loan 142.5 144.3 最大の法人リスク源。内需・不動産・SOHOに敏感。
SOHO向け KRW loan 58.1 58.5 家計と事業の資金繰りが混ざりやすく、延滞を早めに見るべき。
家計向けNPL比率 0.28% 0.27% 絶対水準は低い。現時点では悪化の中心ではない。
法人向けNPL比率 0.39% 0.43% 小幅上昇。今後の信用コストに注意。
SME延滞率 0.47% 0.61% 2026年1Qに上昇。最重要監視項目。
SOHO延滞率 0.48% 0.56% 家計・不動産・内需ストレスの早期シグナルになりやすい。

この表が示すのは、Hana Bank のリスクが家計向けだけに偏っていないことである。韓国銀行リスクというと住宅ローンと家計債務が最初に意識されやすいが、直近の数字ではSME、SOHO、法人向けの延滞上昇がより目立つ。住宅ローンは残高が大きいためストレス時には重要だが、2026年3月末時点では低いNPL比率と担保付き構造に支えられている。一方、SME・SOHOは、内需、建設、不動産、個人事業者の返済余力に敏感であり、信用コストが先に出やすい。

非金利収益は補助的な安定化要因である。Hana Bank の2025年手数料収益は約KRW 1.03tn、2026年第1四半期は約KRW 0.30tnだった。HFG の決算説明では、2026年第1四半期に銀行の信託手数料がETF関連指定金銭信託販売などに支えられて増加したと説明されている。これは、銀行が単純な貸出・預金だけでなく、資産形成、信託、外為、保証、ローン関連手数料を得ていることを示す。ただし、銀行単体の信用評価で主役になるのはなお純金利収益、信用コスト、資本、預金であり、手数料収益はNIM圧力を緩和する補助線として扱うべきである。

外貨・国際業務は、Hana Bank の特徴でありながら、今回の公開データでは詳細に掘り切れていない。外為・貿易金融・海外拠点はフランチャイズの強みである一方、外貨流動性、通貨別満期、外貨調達コスト、海外子会社の資産の質は、外貨債投資家にとって重要である。本稿では、単体外貨LCR、NSFR、通貨別満期ギャップを確認していないため、外貨債の個別投資判断では追加確認が必要である。

Financial Profile and Analysis

Hana Bank の財務プロフィールは、強い基礎利益、高い資本比率、預金主導の調達、低いが上昇方向にあるNPL、低下傾向のNPL coverage という組み合わせである。銀行シニア債の観点では、現在の収益と資本は十分に強い。一方、2026年第1四半期の延滞率上昇は、今後の資産の質と信用コストを確認する必要があることを示す。以下の表は、HFG 1Q26 IR Databook の Hana Bank シートから抽出した主要指標である。金額単位はKRW trillion、比率はDatabookの値をパーセント表示した。

指標 2023年 2024年 2025年 2026年1Q
総資産 498.8 532.4 557.0 564.4
貸出債権 347.2 367.2 396.9 386.1
預金 369.7 387.2 404.3 396.2
純金利収益 7.92 7.74 8.07 2.18
非金利収益 0.98 0.69 1.09 0.23
手数料収益 0.87 0.94 1.03 0.30
引当前営業利益 5.45 4.95 5.55 1.52
信用損失引当 0.85 0.40 0.54 0.08
純利益 3.48 3.36 3.75 1.10
ROE 11.3% 10.3% 10.8% 12.5%
ROA 0.70% 0.65% 0.70% 0.80%
NIM 1.59% 1.47% 1.49% 1.58%
NPL比率 0.26% 0.29% 0.35% 0.37%
NPL coverage 205.5% 165.4% 136.3% 123.5%
CET1比率 16.06% 15.92% 16.42% 16.24%
BIS比率 17.93% 17.39% 17.62% 17.32%

収益力は強い。Hana Bank の純利益は2023年約KRW 3.48tn、2024年約KRW 3.36tn、2025年約KRW 3.75tnであり、2025年に改善した。2026年第1四半期は約KRW 1.10tnで、四半期として強い水準である。純金利収益も2025年約KRW 8.07tn、2026年第1四半期約KRW 2.18tnであり、銀行本体の収益基盤は十分に厚い。銀行信用では、貸倒損失が増えたときに収益で吸収できるかが重要であり、Hana Bank は現時点でその吸収力を持つ。

NIMは2023年1.59%、2024年1.47%、2025年1.49%、2026年第1四半期1.58%で推移した。2024年に下がった後、2025年に小幅回復し、2026年第1四半期にさらに改善している。HFG の2026年第1四半期説明資料では、グループNIMと銀行NIMが上昇した背景として、収益性を重視した資産成長と資金調達ポートフォリオの最適化、低コスト資金の増加を挙げている。NIM改善は明確にプラスだが、信用分析ではこれを永久的な改善とみなさない。韓国の利下げ局面、預金競争、家計貸出規制、デジタル銀行との競争、SME向けの信用リスクプレミアム変化により、NIMは再び圧迫されうる。

信用コストは、2025年にやや増えたが、2026年第1四半期には低く抑えられている。Databook上の信用損失引当は2023年約KRW 0.85tn、2024年約KRW 0.40tn、2025年約KRW 0.54tn、2026年第1四半期約KRW 0.08tnだった。2026年第1四半期のHFG説明資料では、Hana Bank の引当が、ストレスエクスポージャーの減少に伴う戻入もあり、前年同期比で減少したと説明されている。これは短期的にはプラスである。ただし、NPLと延滞率が上がる局面で引当が低いままなら、担保・回収見込み・引当方針を確認する必要がある。引当が低いこと自体を常に良いニュースとはみなせない。

資産の質は、絶対水準と方向性を分けて読む必要がある。NPL比率0.37%は、韓国大手銀行として低い。一方で、2023年0.26%、2024年0.29%、2025年0.35%、2026年第1四半期0.37%と、方向は上昇している。NPL coverage も2023年205.5%から、2024年165.4%、2025年136.3%、2026年第1四半期123.5%へ低下した。coverage が100%を上回っている点は安心材料だが、低下傾向は明確である。HFG の説明では、新規NPLの多くが担保で保全されていたため引当需要は限定的だったとしている。これは合理的な説明になりうるが、投資家としては、担保価値、売却期間、実現回収率、セクター別ストレスを引き続き確認すべきである。

資本は強い。CET1比率は2026年3月末16.24%、Tier 1比率16.42%、BIS比率17.32%であり、韓国大手銀行として十分なバッファーがある。2026年第1四半期にRWAは約KRW 213.8tnへ増加し、CET1比率は2025年末から小幅に低下したが、比率水準そのものは高い。Hana Bank のシニア信用にとって、現時点で資本不足は主論点ではない。むしろ見るべきは、RWA成長、法人・SME貸出のリスクウェイト、グループ株主還元、配当、非銀行子会社への資本配賦が、今後の銀行単体資本をどの程度動かすかである。

調達面では、預金と低コスト預金の動きが重要である。2026年3月末の低コスト預金は約KRW 133.0tn、コア預金は約KRW 93.8tnであり、2025年末から増加した。これはNIM改善に直接効く。市場性調達として、2026年3月末の借入は約KRW 27.9tn、社債は約KRW 35.8tnだった。預金に比べれば小さいが、外貨債を含む市場性調達は、発行体の市場アクセスとスプレッドに影響する。外貨建て債券投資家は、銀行の預金基盤が強いことに加えて、通貨別満期、外貨LCR、外貨社債償還、ヘッジ、グローバル市場ストレスへの感応度を別途確認する必要がある。

この財務プロフィールを総合すると、Hana Bank は「高い資本と強い基礎利益で低水準の資産悪化を吸収できる大手銀行」だが、「NPL・延滞・coverage の方向性を見逃せない銀行」である。シニア債では安定的な信用見方を置けるが、下位資本商品や長期外貨債では、資本比率、規制条項、外貨流動性、信用コストの連続悪化をより慎重に見るべきである。

Structural Considerations for Bondholders

債券保有者にとって最も重要な構造論点は、Hana Bank 発行債、Hana Financial Group 発行債、Hana Bank の下位資本商品、海外子会社関連エクスポージャーを分けることである。Hana Bank はオペレーティングバンクであり、預金、貸出、決済、外国為替、資本、流動性が直接存在する。一方、Hana Financial Group は持株会社であり、子会社からの配当や資本還流に依存する。銀行本体シニア債の信用は、持株会社債よりも銀行単体のバランスシートに直接結びつく。

Hana Bank は HFG の中核子会社である。HFG の公式 Hana Network ページと組織図は、Hana Bank がグループの主要銀行子会社であることを示している。銀行の利益貢献も大きい。2026年第1四半期のHFG連結純利益約KRW 1.21tnに対し、Hana Bank の純利益は約KRW 1.10tnだった。これは単純な持分貢献率として扱うべきではないが、グループの信用・収益・資本運営にとって銀行が中心であることを示す。持株会社が銀行を支えるインセンティブは大きいが、これは法的な債務保証とは別である。

政府支援についても慎重に整理すべきである。Hana Bank は韓国の大手銀行であり、金融システム上重要な位置にあると見られるが、本稿では正式なD-SIB指定、格付会社の支援ノッチ、政府支援評価の全文を確認していない。ストレス時には規制当局の監督、流動性供給、システム安定化策の対象になりうるものの、これは個別債券が韓国政府により明示保証されているという意味ではない。銀行債を韓国政府の直接債務として扱うべきではない。

負債階層も重要である。銀行の預金者、シニア無担保債、カバードボンド、劣後債、Tier 2、AT1では、順位、損失吸収性、規制上の扱いが異なる。Hana Bank の発行体信用が強いことはシニア債には大きな支えになる。一方、Tier 2やAT1では、non-viability、write-down、クーポン停止、コール不行使、監督当局の裁量、税務・規制変更条項などが価格と回収に効く。本稿では個別債券のOffering Circularや契約条項を全件確認していないため、下位資本商品についてはシニア債の信用見方をそのまま当てはめない。

外貨債投資家にとっては、通貨と発行主体の確認も必要である。Hana Bank が発行する米ドル・ユーロ・その他外貨債は、ウォン建て預金・貸出の大きさだけではなく、外貨流動性、通貨別資産・負債、ヘッジ、外貨社債の満期分散、海外投資家の韓国銀行リスク選好に影響される。Hana Bank は高格付の大手銀行で市場アクセスを持つが、韓国銀行セクターでは外貨資金市場が緊張するとスプレッドが動きやすい。今回、銀行単体の外貨LCR、NSFR、通貨別満期ギャップは十分に確認できていないため、個別外貨債投資前の確認事項として残す。

グループ内の非銀行リスクも、間接的には重要である。Hana Securities、Hana Card、Hana Capital は、グループ全体の利益分散に寄与するが、証券市場リスク、カード与信、キャピタル会社の資産の質、レバレッジ、資金調達環境を持ち込む。銀行本体シニア債の直接リスクではないが、グループ資本政策、ブランド、規制当局の見方、株主還元余地に影響する可能性がある。銀行本体が強いから非銀行リスクを無視するのではなく、銀行単体の支払能力とグループ全体の資本配賦を分けて見るのが実務的である。

したがって、Hana Bank の銀行本体シニア債は、HFG グループ内で比較的直接的で防御的な信用エクスポージャーと位置づけられる。発行体としての銀行は大きく、預金・資本・収益に支えられている。一方、持株会社債、下位資本商品、外貨債、海外子会社関連エクスポージャーでは、それぞれ構造劣後、損失吸収、通貨・流動性、法域リスクが異なる。投資家は、Hana というブランド名だけで比較せず、法的発行体、債務順位、通貨、保証の有無、損失吸収条項を確認すべきである。

Capital Structure, Liquidity and Funding

Hana Bank の資本構成は、シニア信用を支える大きな強みである。2026年3月末のCET1資本は約KRW 34.7tn、総BIS資本は約KRW 37.0tn、RWAは約KRW 213.8tnだった。CET1比率は16.24%、Tier 1比率は16.42%、BIS比率は17.32%である。2025年末から小幅に低下したとはいえ、銀行単体として十分に厚い。通常の信用コスト増加やRWA増加を吸収する余地は大きく、短期的な資本不足は主な懸念ではない。

資本比率の見方では、水準と方向性を分ける必要がある。水準としては強い。16%台のCET1は、韓国大手銀行の中でも防御的な部類であり、シニア債保有者に安心材料を与える。一方、方向性としては、2026年第1四半期にRWAが増加し、CET1比率が低下した。HFG 連結では、株主還元の強化、CET1 13%以上維持、ROE向上が経営上の重要テーマになっている。Hana Bank 単体の資本は厚いが、グループ全体で株主還元、非銀行成長、貸出成長、RWA管理を同時に行うため、銀行単体資本がどの程度保守的に維持されるかは継続確認が必要である。

調達の中心は預金である。2026年3月末の預金は約KRW 396.2tn、借入は約KRW 27.9tn、社債は約KRW 35.8tnだった。社債と借入は重要だが、銀行バランスシート全体から見ると預金が圧倒的に大きい。これは商業銀行信用の基本的な支えである。市場性資金への依存が過度に高い金融会社では、スプレッド上昇や投資家心理の変化が直ちに流動性リスクへつながりやすい。Hana Bank の場合、預金が基礎資金を支えるため、定性的には調達安定性が高い。

預金の質も改善している。銀行会計ベースの低コスト預金は2023年末約KRW 114.9tn、2024年末約KRW 119.5tn、2025年末約KRW 125.2tn、2026年3月末約KRW 133.0tnへ増加した。コア預金も同じ期間に約KRW 79.6tn、84.3tn、89.2tn、93.8tnへ増加した。低コスト預金比率は2026年3月末で35.0%、コア預金比率は24.7%だった。これは、NIM改善と資金調達安定性に効く。銀行の低コスト預金は、単なる安い資金ではなく、顧客関係の粘着性を示す指標でもある。

一方、流動性分析には制約がある。今回の英語IR Databookでは、Hana Bank 単体のLCR、NSFR、外貨LCR、通貨別満期ギャップを十分に確認できなかった。HFG 連結や韓国規制上の流動性管理は当然存在するが、本稿では未確認の数値を断定しない。シニア発行体信用としては、預金基盤、低コスト預金、資本、市場アクセス、格付が定性的な支えになると評価するにとどめる。外貨建て債券の投資判断では、外貨LCR、外貨満期、外貨社債償還、ドル資金市場、ウォン安時のヘッジコストを追加確認すべきである。

資本・調達構造をまとめると次の通りである。金額単位はKRW trillionである。

指標 2023年 2024年 2025年 2026年1Q 信用上の読み方
預金 369.7 387.2 404.3 396.2 預金が基礎調達。四半期変動はあるが規模は大きい。
低コスト預金 114.9 119.5 125.2 133.0 NIM改善と調達安定性を支える。
コア預金 79.6 84.3 89.2 93.8 顧客関係の粘着性を示す。
借入 22.5 24.7 29.2 27.9 補完的な調達。市場環境を確認。
社債 26.5 29.8 35.2 35.8 外貨債を含む市場アクセスが重要。
CET1資本 30.1 32.1 33.7 34.7 厚い資本バッファー。
RWA 187.3 201.4 205.1 213.8 2026年1Qに増加。比率低下の主因。
CET1比率 16.06% 15.92% 16.42% 16.24% 高水準。シニア信用を強く支える。
BIS比率 17.93% 17.39% 17.62% 17.32% 小幅低下でも十分な余裕。

この表から、Hana Bank の資本・調達は現時点で強いと評価できる。資本比率は高く、預金は厚く、低コスト預金も増えている。これにより、NPL比率が0.37%へ上昇した程度では、シニア信用の安定性は揺らがない。一方、RWAが増え、coverageが低下し、SME延滞率が上がっているため、資本と調達の強さがどこまで悪化を吸収できるかを見続ける必要がある。

Rating Agency View

Hana Bank の国際格付は高い投資適格水準にある。HFG 1Q26 IR Databook の External Rating シートでは、Hana Bank の長期格付は S&P A+、Moody's Aa3、Fitch A、短期格付は S&P A-1、Moody's P-1、Fitch F1 と示されている。今回確認できた格付水準は、本文で見たフランチャイズ、預金基盤、資本、収益力、市場アクセスと整合している。

格付を読む際には、二つの点を分ける必要がある。第一に、銀行本体の高格付は、銀行シニア債の市場アクセスと投資家認知を支える。第二に、格付会社がどの程度のシステム支援を織り込んでいるか、また政府支援ノッチがあるかは、今回の公式IR資料だけでは確認していない。したがって、格付が高いことを理由に、Hana Bank 債を韓国ソブリン債や政府保証債と同じものとして扱うべきではない。

格付会社の詳細レポート原文は、今回の作業では十分に確認できていない。したがって、BCA、SACP、政府支援ノッチ、格上げ・格下げトリガーの全文は未確認事項として残す。ただし、Databook とHFGの公式格付ページで確認できる格付水準だけでも、Hana Bank がアジア投資適格銀行の中で上位の信用力を持つ発行体であることは確認できる。シニア発行体信用を評価するうえでは、格付は本文の財務・資本・資産の質の分析と整合している。

格付上の下押し要因になりうるのは、資産の質の持続的悪化、SME・SOHO・建設・不動産関連の延滞上昇、NPL coverage のさらなる低下、信用コストの増加、CET1比率の明確な低下、外貨流動性指標の悪化、韓国銀行システムまたはソブリン評価の悪化、グループ資本政策の過度な積極化である。反対に、資産の質が安定し、NIM改善が維持され、低コスト預金が増え、CET1比率が16%前後で保たれるなら、現行格付の安定性は高いとみる。

格付を投資判断へ使う際の注意点は、格付が発行体信用を示すものであり、個別債券の相対価値や価格を示すものではないことである。本稿ではライブの債券価格、スプレッド、CDS、同年限比較を確認していない。したがって、Hana Bank の信用力が強いとは評価できるが、特定の債券が割安または割高とは断定しない。相対価値判断には、同じHanaグループ内の銀行シニア債、持株会社債、下位資本商品、KB・Shinhan・Wooriなどの韓国大手銀行債、他国Aレンジ銀行債とのスプレッド比較が必要である。

Credit Positioning

Hana Bank は、アジア投資適格銀行の中では、韓国大手商業銀行リスクを分析するうえで重要な発行体の一つである。高成長の新興国銀行でも、証券会社中心の市場型金融発行体でも、政府保証付き政策金融機関でもない。預金で調達し、家計、SME、大企業に貸し出し、外国為替、決済、信託、手数料収益を積み上げる大手商業銀行である。信用テーマは急成長ではなく、成熟した銀行フランチャイズ、預金、資本、規制監督に支えられた安定性である。

韓国大手銀行内での相対位置は、上位級だが、最上位と断定するには追加比較が必要である。KB Kookmin Bank と Shinhan Bank は、総資産、預金、貸出、格付、資本の面で強力な同業である。Hana Bank は、2026年3月末総資産約KRW 564tn、CET1比率16.24%、Moody's Aa3、S&P A+、Fitch Aという組み合わせを持ち、銀行シニア信用としては十分に強い。一方、資産規模ではShinhan BankやKB Kookmin Bankの直近レポートで確認された水準よりやや小さく、同業比較では「大手上位行の一角」と見るのが保守的である。

Hana Bank の個性は、外為・国際業務の色と、HFGグループの総合金融機能にある。旧 Korea Exchange Bank との統合の歴史を持ち、HFGのグローバルネットワークと外貨・貿易金融の顧客接点を活用できる。この点は法人フランチャイズの差別化要素だが、銀行本体の直接の資産・流動性と同一視しない。一方、外貨資金市場に対する感応度も持つため、ドル資金市場ストレスやウォン安局面では、単純な国内預金銀行より市場が慎重に見る可能性がある。

シニア債の観点では、Hana Bank は防御的な韓国銀行エクスポージャーとして扱える。銀行本体が発行するシニア債であれば、持株会社債よりも銀行バランスシートに直接依拠し、預金、貸出、資本、規制監督に支えられる。高い国際格付、低いNPL比率、16%台のCET1、低コスト預金の増加は、シニア債保有者にとって大きな支えである。

一方、Hana Bank を無リスクに近い発行体として扱うべきではない。韓国銀行としてのマクロ感応度は避けられない。家計債務、住宅価格、SME、SOHO、建設・不動産、外貨調達、ウォン相場、グループ資本政策が信用見方に影響する。特に2026年第1四半期のデータでは、NPL比率、延滞率、SME延滞率が上昇し、NPL coverage が低下した。これらはまだ信用力を大きく損なう水準ではないが、強い銀行の中でどの指標が先に悪化するかを示す手がかりになる。

下位資本商品では、信用ポジショニングは大きく変わる。銀行本体の信用力が強くても、Tier 2やAT1は損失吸収性を持ち、監督当局の裁量や非存続時トリガーに晒される。Hana Bank のCET1比率は厚く、短期的にトリガーリスクが高いとは見ないが、下位資本商品の投資判断では、クーポン、コール、リセット、元本削減、順位、規制上の扱いを確認する必要がある。シニア債の信用見方をそのまま下位資本へ移すのは危険である。

市場水準の相対価値については、今回のレポートでは結論を出していない。ライブの債券価格、スプレッド、CDS、同年限比較を確認していないためである。信用面だけを見れば、Hana Bank は韓国銀行シニアリスクの中で質の高い発行体と評価できる。一方で、実際の投資可否は、スプレッドが格付、流動性、満期、通貨、発行体階層、同業比較に見合うかを確認した後に判断すべきである。

Key Credit Strengths and Constraints

Hana Bank の主な強みは、(1) 韓国大手商業銀行としての預金・貸出・決済・外為フランチャイズ、(2) 低コスト預金を含む預金主導の調達、(3) 2026年3月末CET1比率16.24%の厚い資本、(4) 2025年約KRW 3.75tn、2026年第1四半期約KRW 1.10tnの銀行単体純利益、(5) S&P A+、Moody's Aa3、Fitch Aの長期格付と市場アクセスである。これらは、銀行本体シニア債の返済力と流動性を強く支える。

制約要因は、低い絶対水準ながら悪化方向にある資産の質である。NPL比率は2026年3月末0.37%、延滞率は0.39%へ上がり、NPL coverage は123.5%まで低下した。SME延滞率0.61%、SOHO延滞率0.56%、SME建設業延滞率1.44%は、韓国の内需、建設、不動産、自営業者ストレスを映す可能性がある。NIMと低コスト預金は現時点で支えだが、利下げ、預金競争、貸出規制、信用コスト増加が重なる局面では収益の防御力が試される。

外貨流動性とグループ資本政策も制約として残る。Hana Bank は外為・国際業務の強みを持つ一方、米ドル資金市場、ウォン相場、外貨社債償還、海外投資家の韓国銀行リスク選好に影響される。HFG の株主還元強化はグループ評価には前向きな側面があるが、非銀行子会社、RWA増加、信用コスト、配当・自己株取得の間で資本配分がどう変わるかは、特に下位資本商品では監視が必要である。韓国の家計貸出規制、DSR運用、預貸金利への政策的圧力、資本バッファー要求は、貸出成長、NIM、株主還元余地に影響しうる。なお、高格付や危機時の制度的支援余地は、政府保証とは異なる。

Downside Scenarios and Monitoring Triggers

最も現実的なダウンサイドは、SME・SOHO・建設・不動産関連の延滞が複数四半期にわたって続き、NPLと信用コストへ移るケースである。2026年3月末の全体NPL比率はまだ低いが、総延滞率だけでなく、SME、SOHO、建設業、不動産・賃貸関連、宿泊・飲食、卸売・小売などのセグメント別延滞率を見る必要がある。特にSME延滞率が0.6%台からさらに上がり、NPL coverage が100%へ近づく場合は、引当圧力と利益の下振れを早めに織り込むべきである。

第二のダウンサイドは、NIM低下と信用コスト増加が同時に起きるケースである。2026年第1四半期はNIM改善と低い信用損失引当が並んだが、利下げ、預金競争、貸出規制、延滞上昇が重なると、純利益と内部資本生成力は圧迫される。第三に、RWA増加やグループ資本政策によりCET1比率が16%を明確に下回り、さらに15%台前半へ向かう場合、シニア債より下位資本商品の警戒度が先に上がる。

外貨流動性ストレスも残る。米ドル資金市場の緊張、ウォン安、韓国金融セクターへのリスク回避、同業の信用イベントが重なると、Hana Bank の外貨調達コストやスプレッドは上がりうる。高格付と大手銀行としての市場アクセスは支えだが、外貨建て債券では通貨別流動性、満期分散、外貨LCR、ヘッジ、同業スプレッドを確認すべきである。

モニタリング上のトリガーは、SME・SOHO・建設・不動産関連延滞の連続上昇、NPL比率の0.4%台超への定着、NPL coverage の100%接近、信用損失引当の増加、CET1比率の16%割れ、低コスト預金の失速とNIM再低下、外貨流動性指標の悪化、格付アウトルックや格付会社コメントの慎重化である。ベースケースでは、これらは短期的にシニア信用を大きく損なう水準ではないが、四半期ごとの確認が必要である。

Credit View and Monitoring Focus

Hana Bank の現在の信用力は、韓国銀行セクター内でも強い投資適格銀行クレジットと評価できる。シニア信用の方向性はおおむね安定的であり、銀行本体シニア債は、信用面では質の高い韓国銀行エクスポージャーになりうる。根拠は、預金主導の調達、16%台のCET1比率、低いNPL比率、強い純利益、S&P A+、Moody's Aa3、Fitch Aの長期格付である。ただし、規制流動性比率、外貨流動性、個別債券スプレッドは未確認であり、投資可否の判断には別途確認が必要である。

ただし、信用見方は放置型ではない。2026年第1四半期にはNPL比率、延滞率、SME・SOHO延滞率が上昇し、NPL coverage は低下した。これが単発の範囲にとどまるか、SME・SOHO・建設・不動産関連を通じて構造的な悪化に変わるかが、今後の最重要論点である。HFG の株主還元強化と非銀行子会社の資本需要も、下位資本商品ではより慎重に見る必要がある。

投資家は、Hana Bank 発行の銀行本体シニア債、Hana Financial Group 持株会社債、Tier 2、AT1を分けて評価すべきである。持株会社債には構造劣後を反映した追加補償が必要になりうるが、実際に十分かどうかは市場水準未確認事項である。Tier 2やAT1は損失吸収条項、コール、クーポン、規制トリガーを前提に別評価とすべきである。

Short Summary & Conclusion

KEB Hana Bank / Hana Bank は、Hana Financial Group の中核銀行であり、預金、貸出、決済、外国為替を広く担う韓国の大手商業銀行である。銀行単体の預金基盤、低コスト預金の増加、16%台のCET1比率、Aa3/A+/Aの国際長期格付に支えられた、強い投資適格銀行クレジットと評価する。方向性はシニア債ではおおむね安定的だが、SME・SOHO・建設・不動産関連の延滞上昇とNPL coverage 低下は継続監視が必要である。投資家は、銀行本体シニア債、持株会社債、下位資本商品を分け、資産の質、CET1、外貨流動性、グループ資本政策を確認すべきである。

Sources

確認済み主要ソース:

本文で使用した主要数値は、原則として HFG 1Q26 IR Databook の Hana Bank 単体シートに基づく。HFG 連結の数値を使った箇所では、その旨を本文で明示した。公式資料から抽出した主要数値は内部の構造化作業データとして保存したが、公開ソースとしては上記の公式IR資料を正本とする。

Unverified / Pending